第17話 巨大スライム討伐です! 祝・初実績達成!


「ズラララララーィ」


「よっ。ほっ。せぃや!」


 キンスラくんの攻撃が激しい。

 ぶっとい触手が大振りにビッタンビッタンしてきて、細長い触手が鞭みたいにパンパン飛んできて、近寄ると固くて短い触手がビュッビュッ突いてくる。


「うぅん。大体解ったけど・・・・・・問題はHPなんだよなぁ」


 とりあえず見に徹していたからまだ攻撃してないんだけど、敵のHPがちょっとおかしいってさっき気がついた。

 このゲーム、HPはゲージバーで頭上に表示されるのだけど、普通のエネミーは赤色で、キンスラくんは紫なのだ。

 これは間違いなくゲージ何本か持ってる。


 スタミナという概念が実装されてないから肉体的に幾ら戦ってても息があがったり苦しくなったりはしないんだけどさ。

 集中力は普通に削れていくわけですよ。勝てるか解らん・・・・・・。


 あと、近距離と中距離の攻撃シフトの境目は大体半径2メートルだとわかった。

 2メートル離れると触手から5WAY弾に変化する。で、遠距離はたぶん10メートルから。

 このキンスラくんはたぶん10メートル以後から魔法で倒すのが一番楽に違いない。


「とりあえず削ってみるかぁ」


 スッスッと触手攻撃を躱していたのだけれど、タイミングを見てぶっとい大振りの触手を斬りとばした。


「ズラー!」


 ゲージがちょっと減り、赤いゲージが見えた。


「お、HPゲージ2本か。それぐらいならいけるかな?」


 集中力が持つかチキンレースだ!


「スラー」


「えっ?」


 その鳴き声は触手を斬りとばした方向から。


「マヂ運営やさしくないわぁ」


 そこには赤色のスライムくんがふよふよしていた。


「死ねっ」


 触手をかいくぐりながら赤色スライムを一突きで殺す。


 ポーン


 ―― [デイリー]レッドスライム討伐 1/10 ――


 うん、今ログ表示されても反応できないかな。


「というかなんで赤?」


 と思ったのだけど、もう当たりが薄く明るくなっているのに気がついた。

 日の出が近い。ゲーム的にはもう朝帯でエネミーも日中仕様に変わっているのだろう。


「ツネオミさん今何時?」


「ゲーム内時間なら5時になったところだよ」


 なるほど。切り替えは5時と。


「エネミー切り替え5時! 新情報!」


「そうですねぇ。夜帯も17時切り替えだから丁度12時間ですね」


「ズラズラー!」「スラー」「スラッ」


 くっちゃべってるけど戦闘は続けてるし、分離したスライムは瞬殺している。

 私ってば器用~。


「あとどんだけあるんじゃーー!!」


「ゲージの減り的に90本ぐらい削れば終わると思いますよ」


 90本か。思ったより少なかった。


「いくぞー! 精神力が尽きるか、お前のHPが尽きるかチキンレースじゃああぁぁ!!」


 斬る。


 斬り跳ばす。


 斬り撥ねる。


 斬り伏せる。


 斬り落とす。


 斬り棄てる。


 斬る斬る毎、斬り斬り舞い。


「よっしもうすぐ1本目終わりぞー!」


 斬り始めてしまえば単調な作業。避けて斬って、分離したのを刺して。


「ズズズラーィ」


 一本目のゲージを削りきった瞬間、キンスラくんの核が光り出した。


「お、新技?」


 というか、いつの間にやらキンスラくん大きさが半減していた。まぁ、あんだけ斬り離せば体積減るよね。


「ズラアアアアアアアアアア」


 跳んだ!?


「回避いいいいい」


 嫌な予感がして後方、キンスラくんより高く跳び上がり回避。


 どぉぉぉぉん。

 キンスラくん迫真の範囲攻撃だった。地面に落下した瞬間、衝撃波が円状に広がったのだ。


「私の直感冴えてるー」


 スタッと着地して接敵。またぞろ触手攻撃してきたのを斬り捨てる。


「今のは一回きりずら~?」


「ズラララーィ」


 触手攻撃。どうやらHP半減時の特殊攻撃っぽい。 

 けれど、他にも変化があった。斬り落とした触手が雑魚スライムにならずズルズル動いてキンスラくんの元に還った。

 HPも回復してて一向に減らない。


「えぇぇ。ここから一撃?」


 どうしようかと考える。

 けど、そんなに思い悩むことは無かった。


 今持ってる得物の刃渡りは目測75センチ。

 今目の前にいるキンスラくんはだいぶ小さくなっている。たぶん一刀両断できるのではないだろうか?


「善し」


「ズラーー」


 攻撃が若干激しくなっているけど、捌けないほどではない。

 けど、捌いてるとちゃんと構えられない。


 一瞬動きが止まればなー。

 後衛に頼む?

 でも、折角ここまで削ったんだからソロ討伐したい。

 どうするか・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ! そうだ!


「善し善し」


 一歩で2メートル飛び退く。


 キンスラくん触手を動かすのを止めて円錐弾を出現させる。


 その隙に私はいつもの首刎ねの構えを取ることができていた。


「死ねぇぇぇぃ!!」


 一足、果敢に跳び込み、渾身の横薙ぎ!!


 ズパアァァン。とキンスラくんが上下真っ二つに分かたれた。


「そこだあぁぁぁぁ!!」


 そして返す刀で核を突き刺す。


 ―― Critical! Deadly! ――


「ズラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 悲鳴が轟き、巨大なスライムはズシャァァァと形を崩した。


「・・・・・・あっぱれ!」


 充足した死合いができたのだ。敵に手向けの言葉を掛けるのは礼儀。

 くるりと刀を振って鞘に収める。


 チンッと鞘を納めきる時に鳴る金属音が私は大好きだ。

 この音を耳にしてはじめて、斬った、勝った、と満足感を感じるから。


 ―― はじまりの草原に棲息するエネミーを全種討伐しました ――


 ―― 実績【はじまりの草原 討伐者Ⅰ】を達成しました ――


 ―― 実績【はじまりの草原 攻略者Ⅰ】を達成しました ――


 ―― [デイリー]フュージョンスライム討伐 1/1 クリア ――


 ―― [デイリー]フュージョンスライム討伐 1/2 ――

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