第15話 検証ですよ。スライムの合体融合は伝統です。
「チェイサァッ!!」
思いっきり横に薙ぎ払う。
噛み付こうと口を開けた狼の顎が上下に分かたれる。
そのまますーっと胴体も上下に切り離され絶命。
「はいおわり! 今なんた~い?」
後方に居るはずのツネオミさんに声掛ける。
はじめは敬語使ってたけど戦闘中じゃそんな余裕ないし、うやむやにとっぱわれちゃった。
「508体ですね。予想が外れました」
「うぅん・・・・・・。1000体やる?」
私としてはどっちでもいい。経験値も塵も積もれば山となるからね。
そろそろレベル上がんなくなってきてるけど、エリアボス楽勝って感じにはならないだろうし。
というか、ポイント振ってないし。ステータスはALL1のままです。
「流石に1000体は違うと思うんですよ。先程も言いましたけど、昼に複数件キングスライムが現れたって報告があるので」
うん。流石に1000体討伐するプレイヤーがそんないっぱい居るかと言われると妖しい。
そんな乱獲するぐらいなら先に進むだろう。特にβ初日なんだからインしてるのは大抵スタダ勢。
さっさと第3町に行ってレベル上げするのが最高効率の筈だから。
こんな初期フィールドでお仕置き湧かすまで刈り続けるとは考え難い。
「じゃぁ、やっぱりお仕置きじゃなくてエリアボスかな。出現条件はなんだと思う?」
「それが見当がついてなくて」
「あら、そうなんだ」
「とりあえず、フィールドの全種エネミーに出会うは除外です。お昼だけで現れてますし」
「そうね。一定討伐数かな?」
「それもちょっと考えづらいんですけどね」
「そうかな? たとえば雑魚三種討伐合計2000ぐらいなら知らぬ内に達成してそうじゃない?」
「あぁ、なるほど。ですが何故2000だと?」
「私もう1500ぐらい狩ってるから」
そういうとツネオミさんはなにやら考え込みだした。
私はぶらぶら歩く。動いてないとスライム出てきちゃうからね。
そういえば、ツネオミさん、動いてないのにスライム出てきてないけどなんでだろう?
エンカウント減少するなにかでも使ってるのかな?
「エコさん。実績タブにエネミー図鑑があって、そこに討伐数が載っているので確認して頂けますか?」
「あ、このゲーム、図鑑デフォ搭載なんだ」
「えぇ、なので検証がだいぶ楽です」
言われた通りに確認する。
キックラビット559、グレイハウンド303、グレイウルフ508、ミスターラビット1。
「あ、ごめんまだ1500じゃないや。合計1371体だね」
「見せて頂いても?」
「どうぞ」
ウィンドウを飛ばす。表示された内容を見たツネオミさんはまた考え出したけど、すぐに結論がでたらしい。
「たぶん、スライム討伐数ですね」
「やっぱり?」
「もしくは昼か夜の三種各100体とかじゃないですかね? 徘徊してるとか時間限定とかの可能性もあると言えばあるのですが、目撃情報がこの場所だけなので、条件を満たしてここに来ると見える、だと思うんですよ」
うん納得がいく推論。
「とりあえずスライム500体討伐してみましょ。出ても出なくても条件が絞れるから」
「そうですね。よろしく願いします」
「どんとこい!」
「では。【スキャニングエコー】」
ツネオミさんがなにやらアーツを放つと、途端にスライムが現れた。
「セイッ」
魔法を発動される前に核を貫く。
パリンと割れてスライムはべしゃりと形が崩れた。
「あっけない」
「凄いですね。あの小ささの核を正確に突き入れられるなんて」
「まぁ、正確さも私のウリだし」
お喋りしながら現れたスライムの核を突き壊していく。
本当は魔法斬りの練習もしたいのだけど、他プレイヤーを道連れにしてまでやろうとは思ってないのでまた今度。
「そういえばスキャニングエコーってどんなアーツ?」
「MPを円状に広げるように発して生命探知する魔法アーツなんですけど、スライムは魔動生命なのでMPに反応して寄ってくるんです」
なんと。そんな特性が。探知のアーツ、なんか取ろうかな?
「エコさん!?」
「ん?」
あ、死角から氷柱。
「シッ」
まぁ、これくらいなら対応できる。ってか、夜のスライムは氷なんだね。
「やっぱり凄いですね。今の間に合うんですから」
「同時に多方向じゃなきゃ対応はできるよ。複数個を複数箇所からとかなると流石に逃げるけど」
「練習してみます? 【スキャニングエコー】三発ぐらい撃てば囲まれるぐらい集まりますよ?」
あぁ、ちょっと魅力的な提案。でも死に戻りの可能性があるのに道連れにしちゃうのはちょっとなぁ。
「あ、そうだ。ツネオミさん動いてないのになんでスライムとエンカウントしなかったんです?」
「このマントとフェイスペイントと隠密でヘイト値カットしてるからです。今でも標的になっていないでしょう?」
言われて見れば。標的になってるのは私だけだ。
そう、ツネオミさんは今も俯せになって草原に擬態している。
擬態したまま喋っていたのだけど。全然気付かれないのだ。
「じゃぁ、囲まれてもツネオミさんが死に戻ることはない?」
「無いですね。合体してキングスライムになるとかだと厳しいかもしれませんが」
「あぁ~ありうる~ てかそれでは? スライムの合体は伝統でしょ」
「確かに。呼び出してみましょうか?」
「検証しようか。死んだら笑って流そう」
「ですね。やりますよ」
「どうぞ」
「【スキャニングエコー】【スキャニングエコー】【スキャニングエコー】【スキャニングエコー】【スキャニングエコー】」
ツネオミさんがドンドンアーツを唱えていく。
じゃんじゃんスライムも集まってくる。
もちろん、氷柱も飛んでくる。
「セイッ、ヤッ、ハッ!」
斬り潰しながら無理そうなのは避けて、氷柱の核を探す。魔法にも核があるのは昼の火の玉斬りでわかってるのだ。
「ん~どこだ~」
ザッ。スッ。ザザッ。キーン。
「あった!」
氷柱が真っ二つになった瞬間、消え去った。火の玉斬りと同じ現象だ。
つまり、魔法斬りは成功すると完全に消え失せる。
「「「「「「「すらー!」」」」」」」」」」」
スキャニングエコー20回目にして、スライムの挙動が変わった。
「お、当たりでは?」
スライムが合体していく。核も融合して大きくなっていく。
「弱点が大きくなるって弱体化でわぁ?」
「どうでしょうねぇ?」
そして、辺り一面のスライムが一体の巨大スライムになった。
「ズラーー!!」
咆吼。元気いっぱいでよろしい。
「さて。倒しますか」
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