第13話 夜の草原散策です。兎さんかわいくない・・・・・・。


「な~にっが、い~るのかな~」


 とっとこ草原を歩く。

 他プレイヤー諸氏はあんまり見かけないんだけど何処に行ってるのかしらん?

 もしかしたらもう先に進んでいるのかしら。


 オープンワールド、しかもサンドボックス型MMOだし、エリアロックとかかかってる方が珍しい。

 というか私、エリアボス倒さないと次のエリアに行けないMMOとか出会ったことないんだけど。

 小説になると何故かその設定のMMO結構出てくるのよね。あれホント謎。


 ひたすらダンジョン攻略する階層型MMOならエリアロックシステム積んでたりするんだけどね。それは別。


「MMOって言ったら先行してたフレンドに町登録だけしようって速度バフ盛られて一撃でも食らうと即死するレベル差のエネミーかいくぐりながら実装されてる主要都市巡るのが醍醐味じゃない? たまにミスって死ぬまでがデフォでさ」


 何を言ってるんだろう私。

 でも、実際レベル差200とかのフィールドをバフもりもりで駆け抜けるのはそれはそれで楽しかったりするのだ。


「何処まで行けるか駆け抜けてみようかなぁ・・・・・・。いや、でもまずはスライムにリベンジしないと」


「グルルルゥゥ」


「ん?」


 唸り声の方に顔を向けると灰色の狼さんが三匹、じりじりとこちらに寄ってきていた。


「いらっしゃ~い。お昼だと猟犬なのに夜だと狼なんだねぇ」


 すらりと得物を鞘から抜き放つ。けど構えはしない。だらりと両手は降ろしたまま。


「バゥッ!」


 先頭の一匹が吠えると同時に三匹は散開。一匹が突っ込んでくる。


「そぉれ」


 ずばんっと調子よく切り上げ真っ二つ。

 そのままぐるりと左に90度体の向きを変えて、向かってくる狼に突っ込んでいく。


「シェイハッ」


 角度をチェックしながら振り上げたままの刃を振り下ろし首を刈る。


「うん。HP増えてたり硬くなってたりはしないね。一撃一撃」


 斬り伏せ終わって振り返り背後の狼を視認。

 意外と近かったので跳び蹴って吹っ飛ばす。


「ギャイン」


 吹っ飛ばされて悲鳴を漏らす狼さんも容赦なくざっくり斬り捨てる。


 ポーン


 ―― [デイリー]グレイウルフ討伐 3/20 ――


「よしよし。夜だと強いとかそういうのもないね。昼だとグレイハウンドだったけど、夜だとグレイウルフか」


 兎ちゃんは何に変わるんだろうね?


「さって探索探索~」


 別に急いでるわけじゃないしね。最速目指さなくても良いでしょ。

 デバッグっぽいこともしないと。

 その内定点狩りでもしてお仕置きエネミーが入るのかとか確認しないとね。

 あと、ひたすら地面掘ってみるとか。あえてトレイン作ってみるとか。

 バグあるか検証するのも大事。お母さんに言われたし。


「ウサー」


 ん?


「・・・・・・そうきたか」


 鳴き声の方に視線を向けた先には直立二足歩行する杵を肩に担いだ筋肉隆々の兎がのっしのっし歩いていた。


「ウサーウサー」


 グレイウルフとは違いアクティブではないらしい。

 もしくは戦闘状態になる範囲が狭いか。


「しゅーるだわぁ」


 ちんまい私のアバターより頭一つ分小さい感じの筋肉兎。でも強そう。


「よし。戦ってみるか」


 直立二足歩行だし、人型に近いから首を狙いやすい。

 ということでいつもの構えをとった瞬間のこと。


「フッ。手合ワセカ」


 超絶ダンディな声で筋肉兎が喋った。


「まじかー。喋るのかー。というか構えるとアクティブになるってなかなか高度な」


「ユクゾ土徳ノ娘」


 どとく?

 疑問に思っている内に筋肉兎がその自慢の足で高々と跳躍し、杵を大上段に振り上げる。


「あ、あれはまずい。当たると死ぬ」


 まぁ、そんな隙だらけなの当たるはずがっ!?


「死ネェィ!!」


 筋肉兎が空中を蹴って突っ込んできた。


「二段ジャンプは卑怯じゃない!?」


 大袈裟に飛び退き攻撃をなんとか躱したのだけど。

 ドゴオオっと大音声を轟かせ、杵がぶつかった地面にクレーターができた。


「火力高すぎぃぃ」


 だが、攻撃後は隙が大きい。筋肉兎は徐に杵を担ぎ直し、もう一度構える、という動作をした。


「あ、はい。避けてカウンターしろってコンセプトなのね」


「ユクゾ娘! 避ケテ見セヨ!」


 筋肉兎が地面を蹴り、私目掛けてカッ跳んでくる。


「シッ!」


 突っ込んでくるなら刃を置くだけで勝手に真っ二つになってくれるだろうけど、しっかりタイミングを合わせて振り抜く。


「!? かったい!!」


 頭蓋骨鉄でできてんのかって堅さだった。


「せいやぁああ!!」


 無理矢理振りきる。ゲームだから無理かなってちょっと思ったけど、結果としてはずぱあぁんと真っ二つに断ち斬れたのだった。


「っしゃああ斬ってやったぞおおお!!」


 思わず雄叫びを上げてしまった。いや、結構嬉しかったのだ。


 ポーン


 ―― [デイリー]ミスター・ラビット討伐 1/10 ――


 あ、はい。ただの雑魚エネミーなんですね。

 まぁ、飛び抜けて強いって訳でもなかったしね。


「よし! つぎ!」


 スライム~どこだ~! というか夜に居るのかー!

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