第167話・第五相ダンジョン、攻略中

「ん……」

「ふ、ぁ……」


 ライトは、マリアを抱きしめて眠っていた。

 二人とも裸で、マリアの身体には愛し合った証が刻まれている。

 祝福弾の効果なのか、ライトは深夜が過ぎてもマリアを愛し、一緒に風呂に入って性欲を発散させた。

 睡眠時間は5時間ほどだが、ライトはすっきりとした目覚めだった。


「マリア、朝……っむぐ」

「ん……おはようございます」

「……おう」


 マリアは、起きるなりライトにキスをする。

 裸なのが恥ずかしいのか、ライトにぴったりくっついて離れようとしない。それが愛おしく、ライトはマリアを抱きしめる。


「あん、ベタベタですわ」

「だな……風呂に行くか」

「ええ。では、連れて行ってくださいな」

「はいはい」


 二人は風呂でたっぷり愛し合い、ようやく着替えて隣の部屋へ。

 ノックもせずにドアを開けると、寝ぼけているシンクとメリーの服を脱がしたリンが、パンツ片手に疲れた表情をしていた。


「お、おはよ……って、ライトは見ちゃダメ!!」

「別に気にしないっつの。何してんだ?」

「見て分かるでしょ……この子たち、寝ぼけて起きないのよ」


 シンクもメリーも素っ裸で寝そべっている。散乱した服はリンが脱がせたのだろう。とりあえず着替えさせようとしているようだ。


「リン、手伝いますわ」

「お願い…………変なことしちゃダメだからね」

「あん。リンってばヤキモチ」

「ち・が・う。朝から疲れるわ……」

「俺、馬の様子を見てくるわ」


 五人が揃って朝食を採れたのは、一時間後だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 朝食を食べ終わった五人は、再び第五相ダンジョンへやってきた。

 人の多さにライトはうんざりする。


「朝っぱらから元気な冒険者だな」

「ま、ダンジョン王国だしね。朝一でダンジョンに潜って深夜に出てくるとかザラみたいだよ」

「ふーん……ま、俺らはしっかりメシを食いたいからパス」

「そう言うと思った……」


 リンは苦笑し、露店で買ったクッキーをこりこり食べるシンクと、珍しくしっかり起きて同じクッキーを齧るメリー、二人を見てニコニコしているマリアを見る。


「ねぇ、昨日もマリアと、その……」

「ああ、したよ。疲れてると俺もあいつも燃えるんだ」

「…………今日は部屋割り変える」

「は?」

「私ばっかり苦労してるからね。ライトは一人部屋、女子は三人部屋に四人! 決定ね」

「……いや、あの」

「メリーは床で寝るし、ベッドは空いてるからね。それともなに? 女の子を抱かないと寝れないの?」

「いや別に……なぁ、怒ってる?」

「……ふん!」


 よくわからないが、リンは怒っていた。

 ダンジョンの入口に向かい、受付を済ませて転移魔方陣の上に乗る。すると、五人は昨夜引き返した50階層に到着した。

 ライトはカドゥケウス・セカンドを抜き、リンは刀を抜いて魔力を漲らせ、マリアは百足鱗を二本出し、右手に巻き付けて槍のように尖らせ、左手に円を描くように巻いて盾を作り、シンクは両手の爪を巨大化させ、メリーは大きな欠伸をした。


「……魔獣はいないみたいだ」

「次の階層から行けるね」

「ふふ、今日も狩りましょうか」

「ん」

「あたしもやろっかなー」


 五人は、51階層へ……。


 ◇◇◇◇◇◇


「じゃ、ここはシンクに」

「ん!」


 現在。100階層。

 運がいいのか悪いのか、迷宮フロアは殆どなく、大量の魔獣が現れるフロアばかりだった。

 普通の冒険者なら音を上げるだろうが、ライトたちは都合がいいと喜んだ。

 階層ごとに一人で戦い魔獣を全滅させる。それを50階層ほど繰り返しながら進む。しかも、階層が上がるごとに魔獣のレベルは上がり、さすがのライトたちも数発ほど攻撃を受けてしまった……が、リンがいるので全く問題ない。


「あー……四肢、狩れない」


 シンクの前に現れた魔獣は、全長10メートルはありそうな『蛇』の魔獣。

 数は数百。だが、シンクの敵ではない。

 シンクの動きは、明らかに精錬されていた。大勢相手を繰り返していたので、注意力や身体の使い方に磨きが掛かっていた。

 もちろん、ライトたちもそれは当てはまる。


「……どう思う?」

「接近戦ではあなたでも勝てないでしょうね」

「……だな」


 恐らく、シンクはライトに匹敵するかそれ以上の強さだ。

 以前は考えることが苦手で単調な動きしかできなかった。だが、圧倒的な身体能力で無茶な動きをして敵を困惑させていたが、今はしっかり思考して動いている。

 

「リンの出番はなさそうだな……これだけの数を相手に大したもんだ」

「うん……見て、シンクってば」


 シンクは、ニョロニョロと動く蛇の頭を切り落とし、死んだ蛇の身体を掴んで鞭のように振り回して攻撃していた。


「四肢だけじゃなく、道具を使うか。やるな」

「……ねぇ、眠い」

「寝ろ。次はお前だからな」

「ふぁ~い」


 シンクは、確実に戦力として使える。

 次に女神と対峙したら、前衛で戦ってもらい、ライトは後方支援に回れる。

 そう考えているうちに、蛇の魔獣は全滅した。


「おわった」

「お疲れさま。はいジュース」

「ん!」


 リンから果実水を受け取り、ゴクゴクと笑顔で飲む。

 どう見ても年相応の子供にしか見えない。実年齢は15歳なのだが。


「じゃ、次の階層……」


 階層の入口が開いたので一行は101階層へ。

 すると、階層の入口には数組の冒険者グループがいた。


「やぁ。きみたち……100階層から先は初めてかい?」


 長髪の冒険者が、そんなことを聞いて来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る