第12話・帰還
俺が騎士になって数ヶ月……リリカたちと別れてもうすぐ1年が経とうとしていた。
俺は相変わらず騎士団でしごかれ、身長も伸びたし筋肉も付いた気がする。
騎士団の仕事は王国の外に現れた危険なモンスターの退治や、王族達が出かける際の護衛などが基本で、選ばれた騎士は王族の直属騎士に選ばれる事もあるそうだ。
相変わらずギフトは謎のままだ。
選抜試験で放った謎の光はさっぱり撃てず、わかった事と言えばあの光は光線ではなく、武具によって生み出された光ということだ。
レグルスやウィネみたいに身体を変化させるギフトもあれば、《五大祝福剣》みたいに武具を生み出して使役するギフトもある。俺のはどうやら後者らしい。後で聞いた話だが俺の手には何かが生まれそこから光が出たそうだ。
だが、正体不明なのは変わらない。
騎士になっても使えないんじゃ意味はないし、俺もそんな不安定なギフトに頼らないで強くなる。
副団長は相変わらず稽古を付けてくれた。さらに驚いたことに、副団長が《剣王》のギフトを持つ騎士団長シュトルンバッハが来たことには驚いた。
「うぬがギフトを持たぬ騎士か」
「うぬ」と来ましたよ。さすがに驚いた。
低い重低音の声で現れた時にはホントに驚いた。しかも副団長は秘密にしてたようで、ニヤニヤ笑っていたしな。
分かっていたが模擬戦となり、ボッコボコにやられた。
手も足も出なかった。このファーレン王国最強は伊達じゃない。騎士団長は身体強化系最強のギフトである《剣王》の使い手。そもそもの地が違う。生身の俺じゃ勝ち目がない。
だからといって諦めるワケじゃないけどな。むしろ目標が出来たぜ。
そんな中、いくつかの知らせが俺たちの耳に届く。
**********************
騎士団専用宿舎の、俺とレグルスの部屋。
鍛錬を終え俺は寝ようと思ったが、町の酒場に繰り出したレグルスが戻ってきた。
レグルスはお調子者だが酒に強く、よく飲み会に誘われては余興などで盛り上げ役を買って出た。
「おいライト、ビッグニュースだ!!」
「レグルス………静かにしろよ」
「あ、ああ。悪い……じゃなくて、ニュースだって」
「何だよ? 明日も訓練があるんだし、早く寝ろよ」
「いいから聞けっての!! 実は……魔刃王が討伐されたそうだ!!」
「………マジかよ?」
「ああ。さっき入ったばかりの情報だ!! 何でも封印じゃなくて討伐したそうだ。これで金輪際、魔刃王の恐怖に怯えることがないって事だ!!」
「お、おぉ……そうなのか」
「んだよ、反応が薄いぞ。お前の婚約者も帰って来るんだぜ?」
「いや、ははは……実感が沸かなくてさ」
「へ、明日になればイヤでも分かるさ。何でも、このファーレン王国の次期国王に、『聖剣勇者レイジ』が選ばれたって話だ。アンジェラ姫が我慢出来ずに言いふらしてるらしいからな。信憑性は高いぜ」
「聖剣勇者………強いのかな」
「ああ。伝説のギフトだ、弱いはずない……騎士団長でも勝てないらしいぜ」
マジかよ。あのバケモノ騎士団長でも勝てないって?
それだったら俺なんかが勝てる相手じゃない。この国は安泰だな。
勇者パーティーの帰国は、間もなくだ。
**********************
それから間もなくして、勇者パーティーが帰国したという知らせを受けた。
その時点で訓練は中止、勇者パーティーを迎えるため全騎士が城に集まり勇者たちを出迎えるため整列する。
「緊張してるか、ライト」
「………」
俺の隣のレグルスが、小声で質問するが、俺は答えなかった。
1年ぶりのリリカとセエレ。会いたくてたまらなかったし、抱きしめてやりたい。
そして、ついに帰ってきた。
「『聖剣勇者レイジ・クジョウ』の帰還だぜ!! 魔刃王を倒した英雄の帰還だ!!」
活発なイケメン少年である勇者レイジを先頭に、後に続く4人の少女。
1人はレイジと同じ黒髪の少女である勇者リン。もう1人は金髪のショートカットの少女の勇者アルシェ。
「あ………」
「おお、あの2人か」
ついに来た。
長いポニーテール少女のリリカと、この1年で髪を伸ばしたのか、セエレの姿が見えた。
俺の姿には当然気付かないが、俺には2人の姿が懐かしく、思わず涙が浮かぶ。
「…………あれ」
俺は、2人の姿に少し違和感を覚えた。
2人ともこの1年でだいぶ成長し、より女らしくなってるのがわかった。俺はまじまじと2人を見て気が付いた。
2人は、俺が送ったリボンとヘアゴムを付けていなかった。
**********************
勇者パーティーは陛下と謁見をするので、下っ端騎士の俺たちはお役御免となった。
あとは精鋭の騎士が謁見の間に立ち会うので俺とレグルスはウィネと合流し、そのまま訓練場へ向かった。
「おいライト、羨ましいじゃねぇか」
「そうそう。あのポニーテールと金髪ロングの2人でしょ?」
「ああ。すっげぇキレイになってた……」
「へへへ、オレにも紹介しろよ、ライト」
「………レグルス? どういうつもりかしら?」
「な、なんだよ、違うって、オレはライトの友人としてだな」
レグルスとウィネのじゃれあいを見ながら、俺も笑っていた。
リリカとセエレの帰郷に、テンションが上がってるのかも知れない。
これからリリカたちは忙しくなるから、会えるのはまだ先になりそうだ。だけど、俺は約束を果たした。騎士になった。
2人を迎えて結婚する。その準備はもう出来てる。
そんな夢を、俺は見ていた。
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