第2話・日常
4年後。俺たちは12歳になった。
遊びもそうだが最近は專ら剣の稽古。
リリカもセエレもオシャレやファッションより武器屋の剣を眺めることが多くなりつつあり、俺は嬉しい反面、父さんは頭を抱えていた。
近所の家の女の子。
12歳にもなると、着てる服や髪型に興味を示してもおかしくない。
だがリリカは長い髪を適当にポニーテールに纏め、服も動きやすいラフなシャツとズボン。
セエレも似たような物だが、少しだけ髪を伸ばして結んでいた。
この4年で、俺たちはかなり強くなった。
子供用の木剣が何本も折れるまで剣を振り、同世代の子供には負けない自信がある。
そして今日も、朝から俺たちは元気いっぱいだ。
「父さん、今日はいつ帰ってくる?」
「いつも通り夕方だ······というか、毎日聞かなくても分かるだろう?」
「いやぁ、つい」
「あなた、お弁当よ」
「ああ。じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃーいっ‼」
父さんは仕事に、母さんは家事をする。
俺は木剣158号を手に取り裏庭へ向かう。
「あ、来た来た」
「先生はいつ帰ってくる?」
「同じ、夕方だってさ」
このやり取りも、いつものパターンだ。
リリカとセエレの手にも木剣が握られている。
それぞれの木剣には、〜号と手掘りしてある。
だけど、この日は少し違った。
「よし、今日もやろうぜ。誰から行く?」
「じゃあ、私から」
リリカと俺の勝負だ。
俺は剣を構えリリカも剣を構える。
「「勝負っ‼」」
********************
それから数時間。
俺たちは剣を打ち合い、何度も模擬戦を繰り返した。
木剣はボロボロで、木剣158号も寿命が近い。
母さんがオレンジジュースを差し入れしてくれたので、俺たち3人は縁石に腰掛けて休憩していた。
「俺たち、強くなったよな」
「うん。ライトは強くなったよ。それに······かっこいい」
「え······」
リリカの言葉に、胸が高鳴る。
俺は慌てて目を逸らし、誤魔化した。
「な、なぁセエレ。セエレは将来何になる?」
「私? 私は傭兵か冒険者かなぁ。かっこいいし」
「へぇ〜。じゃあ《ギフト》をもらったら、みんなで冒険者になるか?」
「それって、私たち3人で?」
「ああ。俺たちならきっとスゴい《ギフト》が貰えるぜ‼」
「確かにね。でも、ライトは騎士が似合ってると思うな」
「俺が騎士?」
「うん。確かにね。ライトはかっこいいし」
「でもさ、騎士団に入るには、強い《ギフト》が必要なんだぜ? 選抜試験もあるし、父さんみたいに強ければ別だけどよ」
「なら大丈夫だよ。ライトはきっとスゴい《ギフト》が手に入るよ」
《ギフト》
それは神の祝福と言われ、16歳の成人の日に授かる異能だ。
殆どは生活の助けになるような能力だが、戦闘用の《ギフト》も存在し、強い騎士や冒険者は、みんな戦闘用の《ギフト》を持っている。
俺たちは4年後に貰える予定だ。
「ねぇライト、強い騎士になったら、私をお嫁さんにしてね」
「え、えぇっ⁉ り、リリカを⁉」
「うん。だって私、ライトが大好きだもん」
「そそそ、そんなこと言ってもよ······」
「ムリしちゃって。ライトもリリカのこと好きなクセに」
「せ、セエレ、何言ってんだよ⁉」
「それはセエレもでしょ?」
「……まぁね」
「じゃあ、私たちをお嫁さんにしてね」
「む、ムリだよ!! お嫁さんは1人だけだって」
「ううん、あのね、騎士になれば「おめかけさん」っていう人を貰っていいんだって」
「おめかけさん? なにそれ?」
リリカが胸を張り、俺とセエレは疑問符を受かべる。
「あのね、パパが言ってた。騎士は貴族と同じ位だから、「おめかけさん」を貰えるんだって。現に、王国騎士は何人もお嫁さんを貰ってる人が居るって」
「へぇ、じゃあライトが騎士になれば、私とリリカをお嫁さんに出来るんだ」
「うん。だから、ライトには強くなってもらわないとね」
俺抜きで話が進む。
だけど、ここまで言われて黙ってられない。
「わ………わかったよ。俺、騎士になるよ」
「じゃあ、私とセエレをお嫁さんにしてくれるの?」
「うん………」
「ふふ、よろしくね、旦那さま」
「よろしくね、ライト」
すると2人は、俺の頬に同時にキスした。
「ななな、何を!?」
「お嫁さんの証だよ」
「続きは大人になってからね」
リリカとセエレは俺をからかうように微笑む。
はずかしいけど、ちょっと嬉しいな。
だけど、この約束は守られることが無かった。
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