勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

第一章・大罪神器【暴食】カドゥケウス・グラトニー

第1話・プロローグ


 『ファーレン王国』の平民街。

 似たような建物が並ぶ町並みは、今日も変わらない。


 ありふれた建物の1つ、その裏庭に、木剣がぶつかり合う音が響いた。


 「はっ‼ ていっ‼」

 「甘いっ、とりゃあっ‼」

 「わわわっ⁉」

 「勝負あり‼ 勝者ライト‼」


 木剣を振るのは俺ことライト、そしてもう一人が幼馴染の少女リリカ。

 さらにもう一人の幼馴染である少女セエレを加え、俺たち3人は父さんに剣を習っていた。


 「ライト、焦ると大振りをするクセが直ってきたな。その調子だ」

 「へへへっ」

 「だが、まだ甘い。全ての剣を受けるんじゃなくて、身体を使い躱すことも大事だ」

 「は〜い」


 俺の父さんは元騎士。

 現在は王国騎士団の武具の整備工をやっている。

 剣や鎧の手入れをしたり、折れた剣などを打ち直したり。団員の誰よりも上手く出来たので、騎士団長直々に整備工への配属をお願いされた。

 父さんとしても、危険な任務よりよっぽど安全な整備工のほうが性に合ったらしく、喜んで転職した。

 こうして空いた時間は、俺達に剣の指導をしてくれる。


 「リリカ、お前はもっと剣をよく見るんだ。目を瞑ったら剣が見えないだろ?」

 「は〜い······」

 「だが、才能はある。剣を握って3年のライトにここまで着いてくるとはな」

 「えへへ······」


 リリカは、俺と同じ8歳。

 女の子らしく髪を伸ばし、可愛らしいリボンで結んでる。だけど着てる服はラフな物だ。

 家が隣同士の幼馴染で、寝るとき以外は殆ど一緒だ。

 俺が5歳で剣を習い始めたころ、最初は見てるだけだったが、1年ほど前から一緒に習うようになった。

 しかも上達が早く、父さん曰く才能があるとのこと。なんか悔しいぜ。


 「セエレは······本当にそれでいいのか?」

 「はい、先生」


 セエレは俺の家の隣に住む少女。つまり、セエレ・俺んち・リリカという感じで家が並んでる。

 セミロングの金髪に、着てる服も男みたいな物だが、れっきとした女の子。

 しかもその両手には、2本の木剣が握られていた。


 「1本より2本のほうが強いでしょ?」

 「バカだな。それは達人だけだよ。現にセエレは弱いじゃん‼」

 「よ、弱くないし‼ ライトより強いもん‼」

 「うっそだーっ‼ お前、俺に勝ったことないじゃん‼」

 「これから勝つもん‼」

 「こら、止めなさい」


 父さんが、俺とセエレの頭を撫でる。

 

 「いいかライト、セエレが強くなれば、お前を負かす日がきっと来る。だから、セエレに負けないように、強くなれ」

 「当たり前じゃん‼」

 「セエレ、お前が二刀流に拘るならそれでいい。その代わり、ライトを倒せるくらいに強くなれ」

 「はい‼」

 「もちろん、リリカもな」

 「はーい‼」


 これが俺たちの日常。

 約束するワケでもなく集まり、日が暮れるまで遊ぶ。

 父さんが居るときは剣を習い、模擬戦を繰り返す。



 俺ことライトと、リリカとセエレの日常だった。



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