第3話・修行


 15歳。

 俺たちは成長し、実力も付いてきた。

 強さで言えば、俺、セエレ、リリカの順だが、はっきり言ってそんなに差は無い。むしろ、俺よりセエレは手数が多いし、リリカは鋭い一撃を入れる。

 

 武器の好みも変わってきた。

 俺は純粋なロングソードを好むが、セエレは斬撃用の双剣を使うようになり、リリカは片刃の太刀を使うようになった。

 

 俺は模擬戦以外でも体を鍛えるようになり、毎日の日課に筋トレとマラソンを加え、同世代の中でも筋力や体力に自身がある。

 それはリリカたちも同じで、俺よりは軽いが筋トレやマラソンをするようになった。おかげで、しなやかな肉体が出来上がったが、無防備な姿にドキッとすることが何度もあった。

 

 リリカは長い黒髪をリボンで括り、一本のポニーテールにしてる。

 本人はバッサリ切りたかったみたいだが、俺がなんとか阻止。リリカはこの髪型が似合うと、シンプルな赤いリボンを送ったら、涙混じりで喜んでいた。

 身長やスタイルも変わり、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでる。

 こちとら思春期なので、シャツをまくり上げたり汗で透けたりが気になってしょうがない。

 リリカも気付いてるが、止める気はないようだ。


 セエレは少しだけ髪を伸ばし、括るようになった。

 リリカだけにリボンをプレゼントするワケにもいかないので、セエレには鳥のレリーフが刻まれたヘアゴムをプレゼントした。

 それからか、邪魔にならない程度に髪を伸ばし、括るようになった。

 身長はそれほど伸びず、スタイルもそんなに変わっていない。

 特に胸元は寂しく、リリカを見て何度かため息を吐いたのを俺は忘れていない。

 

 そして今日も、俺たちは鍛錬する。


 「行くよ、ライト」

 「おいおい、勝負にわざわざ相手に確認するのか?」


 太刀の長さの木剣を構えたリリカ。

 ロングソードの木剣を構えた俺。木剣には【木剣589号】と刻まれてる。


 「……ッ!!」

 「おぉぉっ!!」


 リリカの剣速は早い。

 そして、技のつなぎが抜群に上手い。


 俺は袈裟斬りを躱し、返しの薙ぎ払いを剣で受ける。

 そのまま受けた剣を滑らせリリカの懐へ潜るが、リリカはバックステップで躱す。


 当然、俺は逃がさない。

 そう思い前に出た途端、リリカが前に飛び出した。


 「はぁっ!!」

 「っ!?」


 狙いは……突き。

 俺が追撃するのを見越し、敢えて下がって隙を作る。

 そこを点かれた……が、甘い。


 「おぉっ!!」 

 「えっ!?」


 俺はリリカの突きを剣の柄尻で受ける。

 リリカの得意技は突きと知っていたから出来た芸当だ。


 不意を突かれたリリカのバランスが崩れた。

 俺はその隙を見逃さず懐に潜り込み、リリカの腕を押さえて剣を突きつける。


 「……参った。私の負け」

 「勝ち……だけど、危なかった……」


 リリカの突きが正確だったから合わせられた。

 多分、リリカ以外の突きだったら躱せなかった。


 「でも、ライトの勝ちだよ?」

 「まぁ、結果はな」

 「2人とも、お疲れ様」

 

 俺とリリカの頭上にタオルが降り、手にジュースをカップを持ったセエレが現れた。

 タオルで顔を拭い、ジュースを受け取って飲む。


 「先生は?」

 「今日も夕方……っていうか、「もう教えられることはない」だってさ」

 「それ、昨日も言ってたよね、セエレ」

 「うぅん……クセになっちゃって」


 かれこれ1年前から、父さんは指導しなくなった。

 その理由は、もう父さんが教える事はないから。

 だけど、俺はもちろんリリカもセエレも父さんを慕い、ずっと先生と呼んでいる。

 こうやって父さんの事を聞くのも、おなじみだった。


 「はぁ……」

 「どうした、セエレ?」

 「うん、実は……」

 「あぁ、また反対されたの?」

 「まぁね」


 セエレは、俺と同じ騎士団に入ることを両親から反対されてる。

 俺が騎士になって2人を嫁にすることは決まってるが、セエレ自身も騎士になりたいと言い出したのだ。

 もちろん、俺とリリカは大賛成。だけどセエレの両親は反対してる。


 「ライトが私を貰ってくれるのには賛成してるのに、なんで騎士団はダメなのかな……」

 「まぁ、騎士団は男が入る場所だしな。女騎士もいないワケじゃないけど、やっぱ狭い門だしな」

 「私は両親が賛成してくれるからいいけどね」


 リリカも、騎士団の試験を受ける。

 俺やセエレが受け、リリカが受けないのはおかしいと自分で言い出したのだ。

 その理屈は分からなかったが、とにかく俺たちは試験を受ける。


 「その前に……《ギフト》だね」

 「ああ。それこそ《ギフト》がハズレなら終わりだ」

 「うん。でも、セエレもライトもきっといい《ギフト》が手に入るよ」

 「そうかなぁ……」


 あと数ヶ月後に迫った、《ギフトの降誕》

 王国の大聖堂で16歳の成人を迎えた少年少女に、神が祝福の力を授ける儀式。


 「噂では、去年の儀式で《四大祝福剣》のギフトが発現したんだって」

 「おいおい、それって伝説のギフトだろ? かつての《魔刃王》を封印したっていう4本の聖剣……。そんなのあり得ない、その《ギフト》が発現したってんなら、《魔刃王》の封印はどうなってんだよ?」

 「さぁ、あくまで噂だし。それに、正確には4本の聖剣と《勇者聖剣》の《ギフト》だよ」

 「どうでもいいって。関係ないしな」

 「ま、そうだね」


 そう、俺たちには関係ない。

 数ヶ月後の《ギフトの降誕》で、これからの人生が決まる。

 騎士団に入るため、戦闘系の《ギフト》を手に入れることを考えてる。



 だけど、そうは問屋が卸さなかった。

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