第2話 彼とのお話
テッペイが言うには私たちは春からの友人らしい。
「らしい」というのは、ここから見える景色は周りは黒ずんだ石壁、空を見上げて雲があるか、明るいかくらいしかわからない。暖かさ、寒さも、ここでは鈍く感じる。四季を感じる要素は「今」は欠片もない。
今は夏らしいので人の子からすると私達は短い付き合いらしいが、テッペイ君は私と長く親しんだ仲のように話をしてくれる。
「大学でさ、教授に怒られてさ。」
他愛のない話しからいつも始まる。最近自分になにがあったのか、友人の話、最近流行っていることを「すまーとふぉん」なる物を使って見せて教えてくれる。
他愛のない話が続き、最後は決まって
「チカがまたよー。」
テッペイ君は少し顔を赤らめ、声が上ずりながら話を切り出す。
「忙しいからって電話に出てくんなくてよー、遠くに住んでるからってちょっとはさ、かまってほしいよねー。」
遠くに住んでいるお想い人のことを話し出す。
「テッペイは大学行ってるだけで、時間がいっぱいあるし、忙しくなくていいよね?私も昔みたいにテッペイとウミ君と一緒に遊びたいなーって言ってるのにさ。予定合わせないの向こうだからね!?ムカつかない!?」
いつもチカさんの話をすると最初は照れくさそうなのに、最後は少し怒るのはなぜなのだろうか。人の子はよくわからない。
「相手もお勤めがあるんですからお互いの時間と気持ちを尊重した方がよいと前も話したと思いますが・・・」
彼はすぐに反応し。
「でもさー、まるでいっつもオレが暇みたいじゃん、そこも違うんだよねー。」
「お互い遠くに住んでいて時間が合わないのは仕方のないことですし、そうやって気軽にお互いのことを少しでもお話しして、解り合えるのは素晴らしいことだと思いますよ。」
「うーーーーん。」
テッペイ君はため息と唸り声の中間の様な声を出し、組んでいた腕に力を入れ、目を閉じた。
「まー、なにがあっても好きだけどな!」
「結局その結論なんですね。」
テッペイ君は迷いない眼で私を見て満面の笑み。
私はいつものことだと口を緩め、笑い交じりに話す。
他愛ない彼との話しだが
私が人間のことを好きだと気づかせてくれる。
「こんな話、大学のみんなにはできないからさ、助かってるよ。んじゃ、講義あるからさ、また来るね、神様。」
「はい、またいつでもお待ちしております。私はここにしかいれませんし。」
「なによりお話が好きなので」
テッペイ君は手を振り石壁の隙間に消えていった
「彼は何回日が変わればお話しに来てくれるのか・・」
私はいつも思う。
もう一度目覚めることができて、変わった神として生まれたけれど、
多くの時間が変わり映えしないのは少々退屈なものだ。
せめて鳥でも降りてくればいいのに
私は祠に背を預けながら物思いにふけ、また彼が来るのを待つことにした。
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