窒息

険しい山の中腹。その路肩に車を入れてエンジンを切った。人気はなく、車が通る気配もない。既に手は汗ばんでいた。

窓越しに後続車がないか確認してから、運転席を降りる。ドアを閉めると、大きな開閉音が誰もいない山にこだました。鍵をかけると、いよいよ音をたてるものもいなくなった。


彼は胸ポケットにキーを仕舞い、代わりに煙草を取り出した。箱に入っているライターで火をつけると、自分を落ち着けるために深く吸い込み、吐き出した。紫煙が薄暗い林の中に呑まれていった。


ここは、山を越えて隣県へ続く県道だった。平日さえ工事用のダンプカーが数台通るだけだが、今日はダンプどころか、他の車は1台も見かけなかった。彼はなぜだろうと考え、今日が迎え盆であることに思い当たった。きっと皆盆休みなのだろう。


彼自身も連休中であったし、ここは彼の地元の町でもある。が、彼は実家に戻るつもりでこの町にやって来たのではない。ここへ来るのは、彼の月に1度の習慣だった。


連日猛暑日が続いているが、山陰やまかげに入ると空気は冷たい。這い上って来た冷気を拭うように腕をこすってから、彼は煙草を踏み消した。


彼がいるあたりは、蛇行する山道で唯一直線が300メートルほど続く箇所だった。外側は切り立った崖、内側は渓流へ続く斜面に挟まれている。谷と道とを隔てているのは煤けたガードレールのみで、その向こう側は人工杉が鬱蒼とした林をつくっていた。


彼はガードレールに手をつき谷を覗き込んだ。谷底までは20メートルくらいだろうか。背後に崖があるため直射日光が届かず、谷間の空気は淀んでいるようで、底へ行くほど不透明だった。その陰鬱とした景色を見下ろしていると、半年前の光景が、腹の底から熱をともなって蘇ってくる。彼は記憶に引き込まれかけた。


カシャリ


小さく金属音が擦れる。何かと思う間もなく、鈍く光るものが、斜面に向かって落ちて行った。慌てて胸ポケットに触ると、あるはずの硬いキーの感触がなかった。たちまち焦燥感に襲われる。人からもらったキーホルダーをつけていたせいか、重みで落ちてしまったようだ。


彼はガードレールから身を乗り出した。地面を見回すが、坂はクマザサに覆われていて、どこに落ちたのか見当もつかない。

一瞬、人を呼ぶという選択肢が浮かぶ、が、彼は首を振った。


―――行くしかない。


彼は上りも下りも車が来ないことを確かめると、ガードレールをしっかりと掴んでまたいだ。足元を確かめるように慎重に足を下ろすと、地面は湿って柔らかかった。

急勾配ではあるが、下りられないほどではない。彼は転ばないようにしっかり踏ん張って、鍵を落としあたりを注意深く探した。



どれぐらいたっただろう。彼が時計を確かめると、午後3時過ぎだった。彼は30分あまり、クマザサや地面に敷き詰められた落ち葉をかき分けて必死に鍵を探していたが、それらしいものは見つからない。足場の悪い場所で腰を曲げているので、全身の筋肉が強張り、汗がにじんできた。谷は山陰にすっぽり覆われていて気温が低く、彼の体は急激に冷えてきた。


山は懸命になる彼を見放すように黙り込み、濁った霧が谷川を覆い始める。強く流れているはずの川音さえも、くぐもって遠く聞こえた。

ここには、クマなどの危険な野生動物は住んでいない。しかし杉林では、時々不規則に笹が揺れる。その度に彼は神経を研ぎ澄ませて生き物の気配を探るのだが、なにもいない。そうして再び捜索に戻ろうとすると、今度は鳴き声が、鳥だか猿だか、はたまた風音なのか、それすら判別のつかない鳴き声のようなものが、山の山頂から降ってくる。そうして、自分の周りを何かがぐるぐる回っているような錯覚を覚えては、ありえないと不気味なイメージをかき消した。こうした状況下で一人で過ごすのは、決して信心深くない彼でも堪えた。


まだ時間はある。彼は大きく息を吸って気を引き締めてから、もう一度地面を見るために腰を曲げた。


その時、肩に何かが触れた。


「ひっ」


思わず短い悲鳴を上げる。咄嗟に振り返ると、若い女性が今にも泣きそうな顔で立っていた。


「あっ、あの、あなたも探しものですか…?」


自分以外にも人間がいたことで、彼は内心深く安堵した。


「あ、ああ、君も探しもの?」

「そうなんです~」


彼女は半べそを書きながら何度も頷いた。


「あの、何を探されてるんですか?」

「ああ、鍵を落としてしまってね」

「えっ、実は、私も鍵を探してたんです」


彼女は驚いている。彼は考えた。この辺りを探しているということは、自分の後に山道に入ってきたのだろう。


「こっちには、それらしいものは何もなかったよ」

「こっちの方もありませんでした」


彼女はしょげて肩を落とした。


「もういいや、私、とりあえずレッカー車を呼ぶので」

「待って!」


彼は反射的に発言を遮ってしまった。呆気にとられる彼女に、ゆっくりと話しかける。


「あの…まだ時間もあるし、俺も一緒に探すよ。二人がかりなら見つかるかもしれない」


彼女はしばらくきょとんとしていたが、感極まったように目を瞠った。


「いいんですか?」

「ああ。なんだかここは不気味だし、一人よりは心強いから」


彼の言葉に励まされたのか、彼女も気を取り直したようだった。


「じゃあ、早いとこ見つけましょう!」



二人はさらに谷を降り、とうとう川岸にたどり着いた。そこまで近づくと、川の音がはっきりと聞こえる。谷全体に反響してやかましいくらいだった。川は上流に近いため、大きな石がいくつも転がっている。

ずっと神経を張りつめていたためにどっと疲労が押し寄せ、どちらともなく石に腰を下ろした。


「はあ。全然見当たりませんね」

「かなり広い範囲を探したんだがなあ。もしかしたら、石か何かに弾かれて、変なところへ飛んでったのかも」

「はあ~」


彼女は悲嘆に暮れていた。彼も気持ちは同じだったが、にぎやかな彼女のおかげで、初めよりずっと気が楽だった。


それに、10分ほど彼女と行動を共にしたが、よくよく観察すると、彼女は彼の好みの体つきをしていた。

青みがかった白い肌。肘の内側に薄く浮き出た血管。はっきりと筋の見える細い足首。そして、全体的に痩せ気味であるが、胸は大きく張っている。彼は目測でカップ数を測った。


「ちょっと! 何見てるんですか」


彼女は腕を交差して胸元を隠した。さすがにバツが悪く、彼は慌てて手を振る。


「ちがうちがう、誤解だよ」

「まあ、それは冗談ですけど」


最初はみっともなく泣きべそをかいていたのに、随分元気になったもんだ。彼は半ば感心し、半ば呆れた。


「でも、実は、私もちょっとかっこいいな~って思ってたんですよね」

「何? 俺が?」


彼女は答えず、伏し目がちに彼の顔を伺った。そんな視線を向けられたのは、半年ぶりのことだ。それ以来ずっとご無沙汰だったので、うっかりその気になってしまいそうだった。


彼女はすぐに、「なーんてね、嘘ですよ」と冗談めかしていたが、懐かしんできた情欲が、彼に強烈な記憶を連想させた。



彼女と出会ったのは、去年の11月だった。県内の別の営業所が閉所になり、彼女が彼の勤める営業所に転勤してきたのだ。彼女の仕事は几帳面で正確だが、ひどく物静かで、同性の社員とも打ち解ける様子がなかった。同じ営業所で彼女に積極的にコミュニケーションをとりたがる人間はいなかった。ただ一人彼を除いては。


彼は、なんとしても彼女を手に入れたかった。性格など二の次で、とにかくプロポーションが彼の嗜好にピタリとはまったのだ。しかも、誰に対してもそっけない彼女を振り向かせるというハードルの高い目標が、負けん気の強い彼を更に燃え上がらせた。

とは言っても、彼の会社は社内恋愛禁止なので、大っぴらにアプローチするわけにもいかない。誰にも悟られず、かつ的確な方法でオトさなければ。


それは、彼にとって全くの幸運だった。

休日、市内での買い物をすませ電車に乗り込んだ時、同じ車両内に、偶然彼女の姿を見つけたのだ。しかも、彼女の方は熱心に文庫本を読んでいて、彼に気づく様子はない。

見つけたからと言ってすぐに声をかけるのは愚策だ。彼はまず彼女の様子を注意深く観察した。


彼女は深いブラウンのコートに身を包んでいて、口元までマフラーを巻いていた。寒さのせいか、いつもは真っ白な顔が紅潮している。そして、コートの下はスカートなのだろう、厚手のタイツを履いている。その曲げた膝の裏に、落ち窪んだを想像し、はやる気持ちを抑えた。

読んでいる本の表紙には見覚えがあった。来月封切りされるミステリー映画の原作小説だ。それも、映画化に伴って若い層向けに装丁を改めた新装版ではなく、地味なデザインの版の古いものだった。ページを繰る指も早いので、彼女はよっぽどの速読か、でなければ読み込んでいて内容を知っているのだろう。

彼は著者名だけでもわからないかとあたりを見渡すと、中吊り広告に、まさしくその新作映画と小説を宣伝する文言を見つけた。彼はそこで著者名を確認してから、ゆっくりと彼女に近づいた。


お疲れ様、そう声をかけると、彼女はひどく狼狽した表情で彼を見上げた。

会社の同僚にそこまで驚かなくても。彼は内心苦笑した。


「お疲れ、様です」


彼女は今にも消え入りそうな声で返事した。そして、なるべく目を合わせない態度で、全力で知り合いを遠ざけようとするのようなものを発していた。

彼は彼女を可能な限り刺激しないように、わざとらしくないような、低い穏やかな口調で尋ねた。


「本読むんだね」

「…はい」

「『ソロモンの紋章』は読んだ?」


彼女ははっとして顔を上げた。彼が口にしたタイトルは、彼女が読んでいる作家の最新作だった。

そして我に返っておずおずと頷いた。


「あ…はい」

「面白かった?」

「はい」


そう答えた彼女の目に、他人との交流を避けている彼女が今まで見せたことのない、興味の色がよぎるのを彼は見過ごさなかった。


「三上修が好きなんだ」

「はい。読まれるんですか」

「まだ1、2冊だけど、おススメはある?」

「そうですね、やっぱり『猫と密室』、ですかね」

「来月の映画、観に行くの?」

「はい」


彼女は、それまでと比べたらまるで別人のように力強く―――と言っても客観的に見ればかすかな動きだったが―――頷いた。


「じゃあ、一緒に観に行かない」


彼女はぽかんとした表情で彼を見上げた。思いもかけなかった申し出に、一瞬意味が理解できなかったようだ。


「ごめん、急だよね、良かったらでいいんだけど」


彼にとっては、この一手で成否が決まる重要な台詞だった。

彼女は逡巡して、恐るおそる言った。


「私と行っても、楽しくないと思いますよ…」


彼は思いっきり相好を崩した。


「そんなことないよ。他に、本の話できる相手もいないからさ」


それを聞くと、彼女はおずおずと頷いた。


「わかり、ました」


そして、赤みがさした頬を更に火照らせた。


車内で連絡先を交換した後、次の駅で別れた。

駅へ降りてから、彼はもう勝利したも同然という確信を得た。もうほぼ確実に、彼女の肉体を手に入れられるだろう。

それは決して彼の自惚れではなく、事実1カ月後に交際が始まった。彼としても奇異の目を向けられたくないし、また律儀な彼女も、誰にも彼との関係が露見しないように秘密を守り続けた。


そうして、2カ月の時間が経過した。



「あの、ちょっと、どうしたんですか?」


彼女が声をかけて、彼は我に返った。すっかり思い出に耽っていたらしい。彼女は怪訝そうに彼の顔を覗き込んでいた。


「あ、ああ、ごめん。なんでもないよ。こんな場所だから、つい陰気になっちゃって」

「わかりますー。さっさと鍵見つけて帰りましょ」


そう言って腰を上げかけ、彼女は「痛っ」と声を上げて首を押さえた。


「どうしたの?」

「なんか、わかんないんですけど、チクって」

「見せて」


彼は近づいて彼女の首のあたりを見た。すると、黒くて小さい米粒のようなものが皮膚に引っ付いていた。


「これ、ササダニだね」

「ダニ!?」

「困ったな。無理に取ると頭が残っちゃって取れないんだよね」

「ええ!? どうしたらいいんですか!?」

「満腹になるまで我慢するしか」

「ひーっ! それも嫌です!!」


彼女は大声でわめきながら、しかしどうにもできずに両腕を振り回した。まったく、やかましい女だ、と彼は思った。


「仕方ない。じゃあ取るけど、帰ったら皮膚科に行ってね」

「う、うう」


彼女はうめき声をあげながら顎を上げた。彼は、生唾を呑み込んで上下している彼女の喉元に、触れた。

すっかり冷え切った彼の指先に、薄い皮膚を伝って、確かな熱い血流が、瞬く間に彼の体に流れ込む。その体温が、彼の脳裏に一瞬で過去の快楽を想起させる。


「えっ、なにっ―――」


彼女はほとんどしゃべる間もなく、地面に組み敷かれた。続いて発しようとした言葉も、堅い握力によって咽頭より先に進めなかった。


「かぁっ…はっ」


彼女は空気を求めて大きく口を開け、喉奥がえずくように何度も開いた。その時に、真っ白い肌とは対照的な、真っ赤な舌根が粘液で濡れているのが見えて、彼をますます扇情した。

彼女はあの日同様、彼の指を引きはがそうと必死に爪を立てている。しかしアドレナリンに溺れた彼の脳には、すでに痛覚は届かなかった。


彼は、彼女の肉体、とくに手首足首や、首、頸部にことさら強く惹き付けられた。

以前もそうしようと思ったわけではなく、行為の最中、彼女の首元にあった湿疹か何かにたまたま触れただけだったのだ。


「ちょっと、なに?」


彼女は掠れた声で訊いた。彼でなければ、彼女のものとはわからないほど、普段の振る舞いから想像できない甘い声だ。彼はそれには答えず、彼女の首に両手をかけた。

ほんの出来心だった。首を絞めながらヤると、気持ちいいと聞いたことがあったから。

軽く指に力を込める。はじめ彼女は、じゃれるようなくすぐったい声で鳴いた。しかし、彼が力を強め、その強さが苦痛に変わるころには、彼女は抗議も非難も発することができなくなっていた。彼から逃れようと必死に身をよじる姿。彼女の生殺与奪のすべてを、彼が握っていた。


この高揚感たるや―――むせ返るほどの濃密な香気が、鼻から彼の頭蓋を冒し、やがて全身にまで充満して、歓喜の震えが止まらなかった。


しかし、悦びは永遠には続かなかった。気が付くと、彼女は動かなくなっていた。しばらく恍惚とした時間は続いたが、余韻に浸る感情とは裏腹に、彼の怜悧な理性は彼を助けるべく目まぐるしく働いた。

抜け殻になった彼女の体を車のトランクに押し込む。できるだけ遠く、人気のない山に捨てよう。具体的な場所を決める前に、彼はアクセルを踏んだ。

深夜の田舎道を、気づけば70キロで走っていた。山へ山へと進むうちに、ひどく視界の悪い、曲がりくねった県道に入った。

もはや彼の思考は言語化されず、ただ死体を隠すという目的のためだけに彼の体に指示を与えていた。

カーブを鋭く折れ曲がった先に、直進道路が現れた。彼はすぐに車を路肩に停めた。彼女を両腕で抱え上げ、谷に向かう。彼女の顔は、眠っているようだった。


彼は彼女の体にガードレールを越えさせ、そして谷底に向けて、力いっぱい放った。どさりと地面に落ちる音がして、勢いがついたのか、転がっていく気配がした。しばらく笹が揺れたが、それが止むと、無明の闇と沈黙があたりを支配した。


彼にとって僥倖なことに、その後の記録的な大雨が彼女の屍や痕跡を跡形もなく流し去ってくれた。しかも、彼も彼女も交際のことを一切漏らしていなかったため、彼との関係性を疑うものは一人もおらず、彼女は行方不明として家族に捜索願を出され、それきりだった。


彼も、自分に嫌疑がかからなかったことで少なからず安堵した。しかし、彼は彼女の体が、あの時の情動が、恋しくてたまらなかった。

さすがに、あんな危険を二度も冒すことはできない。それでも、あの時の興奮を何度も反芻しようと、思い出の場所に足繁く通った。


あの時の熱が、命の消える瞬間が愛しくて、愛しくて、永遠に続いてくれればよかったのに。

ああ、残念だ。


「本当に、残念ね」


死んだはずの彼女の口が開いた。

彼は訳が分からなかった。


さっきまで怯えていた彼女が、彼の下で愉快そうに笑みを浮かべている。握りつぶされているはずの彼女の声帯が、笑い声をあげた。彼の脳は混乱のために、体の統率を失った。


彼の目は、彼女の顔にくぎ付けにされた。彼女が大きく開けた喉の奥から、見慣れた鍵の束が吐き出される。彼女は唾液まみれになったそれをつまむと、嬉しそうにほほ笑んだ。


「まだ、つけてくれてたのね」


そうだ、その不釣り合いに大きなキーホルダーは、彼女が―――


その後、彼が理解できたことは―――意識があるうちに認識できたことは―――彼の両手首と足首が宙に縛り付けられたこと。そしてゆっくりと、四肢が四方に引き伸ばされていったこと。肩と股関節が外れた時にも意識は残っており、靭帯が伸び切り筋繊維が引き絞られると、皮膚はひだのように薄くなっていた。皮が裂けると同時に肉も千切れ、断面からは骨と神経と血管が糸くずのように引き抜かれていった。


それは数十秒の出来事だったが、意識が消えるまでの彼にとっては、まるで永遠のような時間だった。




その日の夕方、西日で赤く染まった山のふもとに、一台のダンプカーがやって来た。運転手が、道の左側に立てられた看板と作業員に気が付いて車を停める。作業員が近づいてきたので、運転手は窓を開けた。


「すみません、折り返して、185号線から迂回してください」

「なんかあったんかい?」

「昨夜、この先の山道で落石があったんです。撤去と安全確認で、今日は終日通行止めになってます」

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