宵闇

実体の無い不安に覆われている。

これだけ恐ろしいのに、これだけおぞましいのに、心当たりは少しもない。

背中に黒いもやがいつも乗っているみたい。

重さなんて少しもないはずなのに、異様な質量を感じる。


その大きな影には目がない。

口もなければ鼻もなく、手足どころか胴体すらない。

なのに、私の目にはぼんやりと見えている。

この「ぼんやりと」というのがまた曲者で、わかる人にはわかるものの、わからない人にはとんとわからない。


きっと霊媒師もカウンセラーも闇の底は見通せない。

あまりに薄く、それでいて剥がれる気配もないから。

この先も私は半端な呪いを引きずっていくわけか。


どうせ掴めない霧状の悪夢。

私はただ虚しくそれを眺めることしかできない。

眺めていることしかできない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る