ワルツ
私には何もない、って苦笑いする君を見て、笑いたいような泣きたいようなごちゃ混ぜの気持ちになった。
僕にだって何もないよ、って届かない声で静かに呟く。
ずっと見てきたからさ、君が頑張ってきたのはよく知ってる。
そしてそれがうまくいかなかったことも知ってる。
焦っているのも知ってるし、どこに向かえばいいのか困惑してるのも知ってる。
僕じゃ君を救えないことも、知っている。
君はずっとキラキラの中にいた。
僕が炭鉱で息を切らしている間、君はステージライトに照らされ汗をかいていた。
諦めが悪いのは君も僕も同じなんだろうけど
、スタート地点はずいぶん違ったみたいだ。
こうしていま、君がここまで降りてくるのが、嬉しいような寂しいような。
憧憬の日々は帰ってこない。
というか僕が忘れちまっただけなんだけど。
君を見て濁った涙を流す日が来るなんて、考えたくもなかったよ。
「今からでも遅くない」なんて気休めを言うには互いに大人になりすぎたね。
思い描いた幸せは手に入らなかったな、君も僕も。
それでも生きていくしかないんだよ。
終止符になりたかった、あの日の思いを抱えながら。
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