303号室

真っ白で退屈な四角形が私のすみか。

そして面会時間だけが私の生きるすべて。

小さく手を振るあなたが入ってくると、固い胸がにわかにほぐれていく。

時にはあなたのえくぼを見るだけで泣いてしまいそうになったりとか。

ああ、こんなに幸せな「当たり前」があるなんて。

絵本の話だと思ってたんだよ、本当に。

咳ばかりしてた頃の私に教えてあげたいな。

「大丈夫」、「きっと大丈夫だよ」って。

時計の針が回る頃あなたは背を向けて去ってしまうけれど、あなたの口から出たスープはずっと私を満たし続けるの。

あったかく、柔らかく。

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