第2話 良い父だ

 あれから時が経ち俺は中学三年生になった。そこまで過ごしていくと色々と判明したことがある。まず、俺が転生してから約1500年が経っていた。おそらく俺の魂に耐えれる器が中々生まれなかったのだろう。


 技術力もかなり進化していて周りの様子も全てが変わっていた。だが、ダンジョンは変わらず生成されていて俺が攻略したダンジョンから攻略されたダンジョンは生まれてないらしい。


 そして俺は史上最強の英雄で史上最悪の英雄と言われてるらしい。


 FUCK



 ダンジョンに挑戦する者を攻略者と言い、攻略者を排出する学校があるらしい。

 その中でもエリートが行くアルトルクス学園に俺は行こうと思っている。そこで中の上くらいを目指すのが俺の当面の目標だ。

 アルトラクス学園は国の支援も大きく実力があれば学費なども安い。さらに、将来は有名なギルドに入れたり前線組として独立することも可能だ。

 ただ入試は難関だ。俺は正直実技は大丈夫なんだが筆記が怪しい。勉強は苦手なのだ。


 ちなみにその学校には沢山の名家が入学するがそれは追々説明しよう。まぁこの世界が変わってなければ名家の人間ほど癖の強い奴はいないだろうな。


 俺は父の帰りを待つ中そんな事を考える。別の事を考えて気分を紛らわしたいのだ。


 扉が開く音がすると同時に少し疲れた父の声が聞こえる。


「ただいまー」


「お帰り」


 父がそう言い俺が短く返す。いつもと同じだ。


「父さんちょっといい?」


 スーツを脱ぎハンガーに掛けている父に話しかける。父は疲れているのにも関わらずそれを隠すように笑顔で返してくれる。こういう小さい気遣いを見続けて父の印象もかなり変わっている。


「おう。いいぞ」


 父はそう言い俺が座っているダイニングテーブルの椅子の向かいに座る。父は俺の真剣な顔を見て何かを悟ったように真剣な顔で見つめ返してくれる。前世の俺の親とは大違いだな。


「父さん俺アルトルクス学園に行きたいんだ」


 少し声が震えてしまう。前世でもっと緊張した場面を経験したはずなのに何故かとてつもなく緊張してしまう。


「本気なんだな」


 父は重たい声で俺に問う。絶対父の方があのクソ人見知り魔王より威厳があるな。


「うん、本気だよ」


 俺は真剣な目で――この目だと睨んでるような感じになるが――父に答える。


 父もその目を見て感じたかのか満足気に微笑むと張り詰めていた空気が一気に和らぐ。


「お前が本気なら俺は止めないよ。ただし簡単に諦めるなよ」


 俺は父の言葉を自分の中で心に刻むように何回も唱えた。

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