雨の街に突如鳴り響く女のアナウンス。それはあまりに長く、狂おしく、異様で。
しかし街に溢れる若者たちもまた同じほどに狂おしく異様で――互いを意識しないままに両者は異様を重ね、街を狂気で満たしていく。
まず最初に述べておきたいのは、この作品は読解力を問うようなものじゃなく、読者の感性に訴えかけるものだってことです。
構成も表現も言葉遣いも生々しくて尖ってるんですけど、それが絶妙に詩的で、(音楽ジャンルのロックで云うところの)メロディックなんですよね。
執拗に繰り返されるフレーズの中に見えるものは多分、読者さんによってちがうはず。そういう、ひとつの結論を導き出せないところ……言い換えれば「読めない」ところが、なにより興味深くてたまらなくおもしろいんですよ。
読んでみて! と誰かにおすすめした後、どんなふうに感じた? と訊きたくなることまちがいなしですよ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)