マリア編10(エピローグ)

「で?どうだったの?」


「何が?」


 秋休み明け、学校帰りに久々に女子三人、集まったタイミングでコーデリアが聞いてくる。


「秋休みに私達の誘いを断ってジェイクの任務について行ったんでしょ!?」


「うぇ!?」


 な、な、な!何で知ってんのコーデリア!!思わず変な声出ちゃったじゃない!

 いや、そりゃ口止めした訳じゃないし、する必要もないけどもジェイクはそう言う事、自分から言う人じゃないのに!


「え!何ですかそれ!詳しく!」


 アルン様もめっちゃ食いついてくる!そうだった、アルン様、割と人の恋バナ大好きっ子だった!


「何でジェイクの任務をコーデリアが知ってんのよ!」


「ふっふー!エルシオン様から聞いたのです!」


 皇太子殿下ァ!?国の任務を何で軽々しく言っちゃうかなぁ?よりによってコーデリアに!しかし相変わらずコーデリアの情報収集能力は凄いな?


「ほ、ほら、私、短剣術で首位取ったじゃん?だからお試しに的な…」


 何だろ…別に隠す様な事じゃないのに咄嗟に誤魔化してしまった…。


「ホントにそれだけぇ?任務だけだったのぉ?」


 コーデリアが疑いの眼差しを向けてくる。


「ほ、ホントウダヨ」


「エルシオン様、言ってたよ?『任務先は有名な温泉地だ。任務が終わっても2、3日は泊まってくるんじゃないかな?』って!温泉宿の料理は絶品だしなって!ホントに、任務だけぇ?」


 うわぁぁァ!皇太子ィ!絶対知ってたな!絶対ジェイクが私にプロポーズするって知ってたな!わかっててコーデリアに話したな!そう言えばジェイクもホントは休暇取ってたのにエルシオン様からついでに任務してこいと言われたって言ってた!!


「そうなんですか?私も温泉行きたい!」


 コーデリアと対象的にどこまでも純粋なアルン様!このまま温泉の話にしたい!


「ふ、ふふふっ、アハハハ!」


 突然アルン様が笑い出す。え?何?どうしたの!?


「ダメ、笑っちゃう!ごめんなさーい!」


「あー!もう、仕方ないなぁ」


 コーデリアも笑い出す。え?何?どういう事?


「ほらマリア。ゆ・び・わ」


 あ。……コーデリアに言われた瞬間、顔がリンゴになる。


「その雪の紋章、レスター家…ジェイクさんの紋章ですよね」


 アルン様がニコニコしながら私の手を指差す。


「最初から私もアルン様も気づいてたんだよ?指輪!」


「コーデリアさんが『マリアが慌てるところ見て見ようよ』とか言うんでつい…」


 アルン様もグルだったのね!してやられたわ!そして目論見通り慌ててるわよ、私!


「それで?」


 コーデリアがニヤニヤと聞いてくる。


「そ、それで?とは何よ、コーデリア」


「チューはしたの?」


 はっ?チュー?チューって一体何を……


「ななな!な、な!何を言って…!?」


 ダ、ダ、ダメだ!リンゴを通り越して顔から火が絶対出てる!!


「これはチューしてますね?絶対してますね?どう思いますアルンシーダ様?」


「あー、これはしちゃってますね、マリアさん、今までで一番可愛い顔してますし。絶対チューしてますよコーデリアさん!」


 う、うわぁぁぁァ!やめて!ホント!マジやめて!?恥ずか死ぬッ!!


「さて、それじゃ今日はマリアの部屋に遊びに行きますか!」


 なんで!?


「そうですね!温泉宿でジェイクさんと何があったか…詳しく聞かせてもらいましょうか!」


「え!ちょっ!?ホントに!?いや、あの、恥ずかしいんだけど!」


 コーデリアとアルン様にガッツリ両腕を組まれる。


「婚約おめでとうマリア!ふっふー!今日は寝させないよマリア!」


「婚約おめでとうございます!マリアさん!いっぱいお話聞かせて貰いますから覚悟して下さいね!」


 二人に連行されて寮の自室まで連れ込まれる。参ったなぁ。まだうちの両親に報告もしてないのに。年明けに今度は私と一緒にジェイクがうちの両親に挨拶しに行く約束をしている。


 何やかんやで二人は私を祝ってくれようとしてるんだよね…まあ、こういうのもいいかも知れない。恋バナを話せる友達がいるってのも。


 いや!やっぱり恥ずかしい!助けてジェイク!



 こうして私の新しい日常は、まだまだ続いていく。

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子爵令嬢の日常 アキ @aki_aki1125

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