マリア編9
「俺の家族になって欲しい」、確かにジェイクはそう言った。言った!
家族になる…つまりはその…何ていうか…結婚して欲しいって事だよね?プロポーズだよね?他に変な意味ないよね?私、勘違いしてないよね!?
「あ、あのですね?あのですよ?ジェイクさん」
「何だよジェイクさんて」
「そ、それは、あの、その…結婚して欲しいって意味で…合ってますか?」
「な、何だよ合ってますかって…そ、そうだよ!それで合ってるよ!」
ジェイクの顔が真っ赤になる。普段クールなジェイクの顔がリンゴみたいに真っ赤だ。もちろん、今私の顔もリンゴになってる。
思わず立ち上がり、ジェイクに抱きつく。嬉しい。何これめっちゃ嬉しいんだけど!!
「お、おい!」
「何かね…自分でもよくわからないの。でもすごく嬉しい。私、ジェイクの事、好き。大好き。だからかな、凄く嬉しい!」
「そうか。俺も凄く嬉しい」
ジェイクが優しく私を抱きしめる。
「今回の任務、私を連れて来たのはアレクが絡んでるからだとばかり思っていたけど、本当は私をご両親に紹介するつもりだったのね」
「まあ、結果的にそうなるが…元々任務が無くても両親に紹介するつもりでマリアの秋休みに合わせて休暇を取ってたんだよ」
「えっ、そうなの?」
「タイミングと場所がな…俺の実家近くで事件が起きたからな、ついでに任務をこなして来いってあの上司に言われてな…」
うわぁ…エルシオン様なら言いそう…。
「まあ、実家だと言わなかったのは悪かったよ。いざ両親に紹介となると…俺もちょっと照れくさくてな。言い出せなかった…」
何それ可愛い。
「まあ、オヤジもオフクロもマリアを気に入って貰えたみたいだしな」
「え、そうなの?あんまりお話まだしてないけど…」
「宿で売店に居ただろオヤジ。オフクロは温泉の更衣室でロッカーの鍵渡してたろ」
え!売店のおじさんだけでなく温泉のおばさんもヘレナさんだったの!?全然気づかなかった!
「何か騙したみたいになっちまったけど、二人ともマリアをよく見てたんだよ」
「うわ、なんかそれ恥ずかしいんだけど!」
え、私あの時どうしてたっけ!?何か恥ずかしい行動してない?というかどこを見られてたの?私何もしてなくない?むしろ人質にされてダメな子になってない!?
「まあ、もちろん二人とも従業員が避難してるから宿が使える様にって俺たちのために来てたんだけどな。あの猪料理もオフクロが作ったヤツだ」
「え!何それすご!後で作り方聞きに行こうかな?あれとっても美味しかった!」
帝国は割と貴族でも料理したりする女性は多い。まあ、うちも田舎の小さな貴族だったから私のお母さんも料理してたけど。というか村人は避難させてるのに領主は私達の為に宿で働いているとか良い人過ぎない!?
「そっかあ。でも気に入ってもらえたなら良かった。ジェイクとの事、認めてもらえたって事だよね?」
「ま、そうだな。それと、コレをだな…」
ジェイクがジャケットのポケットから小さな箱を取り出す。まさか。
「まあ、なんつーか…その…アレだ…」
「アレ…アレね?」
箱を開けて中から宝石で雪の結晶をあしらった指輪を取り出して私の指にはめる。雪の紋章はレスター侯爵家…ジェイクの家の紋章だ。
「な、なんて言うか…アレだ。こういうの、何て言って渡したらいいか解らないんだが…こ、婚約の証、的な?」
さらに顔を赤くしながらジェイクが私を見つめる。帝国も王国も、婚約者には指輪を贈る風習がある。つまり、これは婚約指輪だ。
「ありがとう…ジェイク…」
何だろこの気持ち。私、ここに来てから初めての感情ばかりだ。嫉妬、恋、そして今。言葉に出来ない感情が溢れてくる。
「俺は…マリアには笑っていて欲しい。マリアの笑ってる顔が好きだ。だから、これからは俺の側で笑っていて欲しい」
うわっ!ジェイクが!ジェイクが初めて言った!言ってくれた!割と付き合いも長くなって来て、結構一緒に居る時間は長かったけど、初めて…私の事を、好きって…!
「あのさ、ジェイク」
「ん?」
「もう一度言って?」
「えっ」
「私の笑ってる顔が、なんなの?もう一度…」
「あー…その、何だ…」
「何?」
「マリアが…好きだ」
その瞬間…わかった。この感情の正体が。
私、今、幸せなんだ。
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