最終話
「まさかオレも帝国に来るとはなあ」
ダドくんが呟く。いや、それは私も思った。
グランデ辺境伯が帝国に着いた事により王国は実質被害なく帝国になったが、グランデ領時期当主を兄クリュートが辞退した。殿下の事、気に病んでいたんだろう。それでダドくんに当主の座がまわって来たので私と一緒に帝国の学校に編入されることになった。
「おはよマリア!」
「おはよコーデリア」
コーデリアも同じく帝国の学校だ。アルン様が私同様に着いてきて欲しいと推して一緒に帝都入りした。さすが皇族。それくらいは簡単に出来るらしい。まあ、私もコーデリアがいると安心するかな。ダドくんは嬉しそうにしてるし良かったね。
「もうひと月経つけどさあ、まだ慣れないなあ、帝国の授業!…難しくない?」
「わかる。難しい!レベル高いわ」
「騎士科にあたる軍部もレベル高い。正直、王国の剣術が通用しない。恐るべし帝国…」
私達が通う帝国の学校は王国みたいに併合された国々から有望な貴族を集めた学校で、卒業後は最終的に母国(領地?)へ赴く幹部候補生らしい。幹部ってなんかすごいな。
「皆様、おはようございます!」
「アルン様!おはよ!」
アルン様も同じ学校だ。クラスこそ違うけど、皇族として文字通り帝王学を学んでるらしい。エルシオン様が第一継承者でその下には妹君が二人いるが男子はまだ他にいない。今のところ第四継承者なんだって。帝国は女性にも継承権があるから一応皇帝になれるとか。いやさすがに継承順位は4番目だからないだろけど女帝アルンシーダ様とか想像したらカッコいいな?
アルン様が皇帝陛下に謁見した時、私も一緒にいた。アルン様と同じ銀髪でエルシオン様がそのまま歳をとったような方で陛下には優しいお言葉をかけてもらった。勿論、大陸統一を目指してる方だし、おそらく厳しい一面も持ち合わせているだろうけどアルン様を見る目は優しかった。自身の姪にあたる方だし安心して任せていい気がする。皇帝陛下にアルン様を宜しくと頼まれたのは緊張したけど。
「そう言えばジェイクんちでお茶したんだよね?どうだったの?」
「ふえっ!?」
コーデリアに急に振られて変な声出た…
帝国に着いて陛下に謁見し落ち着いた頃、ジェイクが約束通り?お茶に呼んでくれた。いやまさか言葉通り本当にお屋敷に誘われるとは思ってなかったけど。
「ふ、普通にお茶しただけだよ?」
「その割に今顔真っ赤じゃん!ホントにお茶だけぇ?」
「ほ、ホントにお茶だけだよ!」
…いやホントにお茶しただけだよ?うん、ホントダヨ?
ジェイクは侯爵って言ってだけど元々は子爵だったんだって。帝国は実力主義で実績をあげると爵位も上がるとか。平民から侯爵まで上がった人もいるらしい。エルシオン殿下に認められて侯爵になったんだって。
ジェイクのお屋敷は帝国学校から近い。実は今日の夜もお屋敷で夕食を一緒に頂く約束をしてる…いや、ほら、アレよ!今後の方針とか打ち合わせとかだから…ね?
「コーデリアだって、昨日の夜ダドくんと帝都をまわってたじゃない!」
「ふっふー、私達はデートしてたのです!」
うっわ、普通に惚気られた!あれから帝都に来るまでにお互いさらに距離を縮めて付き合い出したらしい。最初はダドくんが当主を継ぐって事で心配したんだけど、コーデリアも帝国へ行く事が決まってからグランデ辺境伯公認になったのよね…。
「いいなあ、マリアさんもコーデリアさんも。ラブラブで!」
「いやいや、ラブラブなのはコーデリアだけだからね!」
「あれぇ?マリア顔真っ赤だよ?」
「わ、私はまだそんなんじゃないし!」
「お?『まだ』?」
く!コ、コーデリアめ!
「私も誰か、いい人見つけないとね!」
皇帝陛下の姪だ、それでなくても美人だし帝国に来てからも言い寄る男子は多い。王国で婚約破棄された事も大して全然マイナスにならないみたい。そりゃそうか、皇帝陛下の姪御さんだもんね…。エルシオン様もその辺りはアルン様に任せる、政略結婚とかはさせる気はないと仰ってたけど、多分婚約破棄の事を気にして下さったんだと思う。アルン様も今度こそ幸せになって欲しい。変な男は私とコーデリアが絶対許さないけど。
王国が無くなり、皆で学園を楽しく卒業するという当初の目的は結局、学園を出る事になったけれど、新たに帝国で、新しい学校で皆と一緒に楽しく過ごせてる。
これからまだまだ色々な事が待ち構えてるだろうけど皆と一緒なら大丈夫な気がする。
私の何でもない日常は、これから始まる。
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