間話「その後のお話」

「さあ、始めるよ!第一回!『アルン様が付き合うなら誰?』会議〜!!」


 相変わらずテンション高いなコーデリア。ていうかアルン様が付き合うなら誰って何!?私達が決めるの?と言うか第一回て何!第二回もあるの!?いや、もう初っ端からツッコミ所ばかりで頭がついてかないんですけど?


「アルン様は帝国に来てからモテまくりです!そりゃもう、ティタニアの元王族から帝国の貴族まで、めっちゃモテてます!そこで、変な男が付かないように、会議します!」


 確かに、帝国に来てから色んな男性からアプローチを受けてたのは知ってる。


「凄くモテてるからちょっと心配はするけど…どんな方なのか、私達もまだ日が浅くてまず情報が無くない?」

「ふっふー。だからぁ、どんな人なのか調べました!」


 マジかコーデリア…凄いな!…待って、この前テストの成績悪くて再試験受けたの、それが原因じゃないだろな?


「あと、どうしても調べきれなかった人もいたので、そこはジェイクんにお願いしました!」


 えっ


「だからってオレん家に集まるの、おかしくね!?」

「だってジェイクんのお屋敷、学校から近いから…」


 …授業終わりにジェイクん家集合とか言い出すからおかしいと思ったけどそういう事か。


「それはともかく、アルン様のお付き合いする人を決める?のにアルン様本人が居ないのおかしくないか?」


 ダドくん…めっちゃ正論だわ…何でアルン様居ないの?


「あのねえ、こういうのは、本人が知らない方がいい事もあるの!わかってないなぁ、ラン君は!」


 え、そういうモノなの?いやそれ私もわからないな?というか付き合いだしたからか、コーデリアがダドくんを呼ぶのが『ランダード様』から『ラン君』に変わってるぞ!?アレ、一応コーデリアの前はもう私もダドくんと愛称呼びしない方がいいかな?


「ま、まあ、よくわからないが…とにかく、じゃあ今アルン様がお付き合いするとしたら誰がいいの?」


 仮にも皇帝陛下の姪だ、変な人じゃなきゃいいとは思うけどある程度身分もないとエルシオン様や陛下もいい顔しないんじゃない?


「そう!よくぞ聞いてくれましたマリア!」


 あ、うん…


「今アルン様にアプローチをかけてる男性は26人います!」

「「26!?」」


 確かにモテてるとは思ってたが26人は多いな…いや多すぎでしょ、それ一人一人調べたの?


「はいジェイくん!お願い!」

「やれやれ…」


 コーデリアが頼むとジェイクが手にした書類を皆に配っていく。


「え…これもしかしてその26人の名前と略歴?」


 ダドくんが目を丸くする。いや、割と本格的な資料出てきたけど本気の会議なの!?というかジェイクにこんな事頼んでたの!?エルシオン皇太子殿下直属の諜報員に?コーデリア、アンタホント凄いわ…。


「ん?既に×が付いてる名前もチラホラあるわね?」

「それは一応身分が伯爵以下の男爵子爵の人です!流石にちょっと子爵や男爵はねぇ…?」


 それはわかるんだけど、それに×付ける私達は子爵令嬢なんだけど?


「で、コーデリアは誰が本命だと思ってるんだ?」

「はい、ランくん!いい質問です!資料2枚目をご覧ください!有力候補をまとめてみました!」


 さすが元侍女科、手際がいいな…どれどれ?


「ふうん?」


 ティタニアの元王太子「レイモンド」

 帝国ウリエンス公爵の次男「ラグラス」

 帝国サンフレット侯爵長男「マルス」

 アンルシナの元王族「ジョセフ」


 私でも聞いた事ある名前だな?というかこれあるなら26人の名簿、要らなくない?この4人だけで良かったんじゃ?


「ん?何でこのグラゼニア公国の元王太子は×ついてるの?」

「ランくん…よく見て?」


 グラゼニア元王太子「アレク」


「あー…」


 どっかの元王太子と同じ名前かぁ。ごめん、グラゼニアの元王太子。どんな人か知らないけどその名前はイメージ悪いわ…確かに×付けちゃうわ。


「ティタニアのレイモンドはどんな人なの?」

「うーん、普通?でも確か軍部の人だよね?ランくん、何か知ってる?」

「んんー、噂だけど、色んな令嬢に声かけてるみたいだな。あまり気にした事無かったがそう言えば色々な女性と街を歩いてるの見たな」

「「却下」」


 はい、レイモンド様、×っと。


「このラグラス様はどんな方なの?ジェイク」

「ラグラスか。あんまお勧めしねえなあ。いや、本人は至って普通、女癖もないし善良な奴だ。だが…ウリエンス公爵は今国庫の使い込み疑惑がなァ…」

「「却下」」


 いや、そんな危ない家に嫁いで欲しくない。


「じゃあじゃあ、このサンフレット侯爵は?」

「あ、私同じクラスだわ。イケメンで人当たり良いし、社交的で面白い人よ」

「やめとけ」

「ん?ジェイク何か知ってるの?」

「そいつ子供がいる」


 えっ待って、同じクラスだよね?同じ16歳じゃないの?

「去年メイドに手を出して今妊娠5ヶ月だ」

「「…却下」」


「じゃ、じゃあ、最後のこのアンルシナのジョセフさんは?」

「ジョセフか…確かに特に問題はないが…」


 お?ジェイクのダメ出しがない。これは合格か?


「アンルシナは最後まで抵抗して結局武力で落としたんだがその時最後まで戦った勇将だな」

「アンルシナってどんな国だっけ?」

「授業で習ったでしょ、コーデリア…帝国の南にある熱帯地方にある国よ?」

「なんか暑苦しそうな人かなあ?」


「皆集まって何やってんだ?」


 不意に声をかけられ振り向くと、いつの間にかエルシオン殿下が。


「エ、エルシオン様!」


 驚くダドくんから手にした資料を取る。


「第一回…『アルン様が付き合うなら誰?』会議…?」


 うわっちょっとヤバくない?勝手にこんな事して怒られない?


「プッ!なんだ、これ!最近ジェイクがフラフラしてると思ってたが、これ作ってたのか、ハハハ!」


 めっちゃ笑われてる。なんか恥ずかしいとこ見られたなあ。とりあえず怒って…ない?


「なるほどな、確かにアルンシーダが色々男性からアプローチ受けてる話は聞いていたが。確かにそれは心配していい案件だったな」


 とりあえず、事情を説明したらむしろ興味を持って頂いたみたい。


「まあ、だがそれならジョセフは無しだな」

「何かご存知なんですか、殿下」

「ああ、コイツは東のクレンと内通している。今は泳がせているがクレン陥落後はそれなりの処分が下る」

「「…」」


「うわー、こうやって見たらロクな男に言い寄られてないなあ!!」


 ホントだよ…コーデリアの言う通り、男運悪いな…ちょっと可哀想。


「まだ帝国に来て日が浅いんだ、そんな焦って決める事なかろう?」


 確かに殿下の言うのももっともだ。


「でもでも、来月陛下主催のパーティがあるじゃないですか!パートナー決まってないの、アルン様だけだよ?」


 あ、そういえば。コーデリアはダドくんとだし、私は…ジェイクと行くし。


「ああ、そうか、いや、問題ないよ。それなら私がパートナーを務めよう」


「「エルシオン様が?」」


「ああ。私では不服か?」


 滅相もない!エルシオン殿下とアルン様…うわ、想像しただけでキュンとするような美男美女の素敵なカップルだわ。


「あーあ、いっそ、エルシオン様がアルン様と一緒になってくれたらいいのに!」


 ちょっ、コーデリア、それは不敬過ぎない!?確かに殿下も独り身で特に婚約者もいらっしゃらないけど、従兄妹同士だし。


「私が…アルンシーダと?」


 ん?なんか考えこんでる?


「そうか…考えた事無かったが…従兄妹といえ結婚できなくはないか。ふむ」


 え。まさかの乗り気?


「まあ、一つの案として考えておこう。私としては全然構わないが、アルンシーダには自身が好きになった男性と想いを遂げて欲しいからな。お前たちも程々にしておけよ」


 確かに。アルン様も彼氏が欲しいみたいに言うけれど婚約破棄の件で若干男性不審なとこある。無理しないで見守っていくのも必要か。パーティは殿下がパートナーになってくれるみたいだしね。


 それにしても、殿下とアルン様、アリなんだ!

 まだ殿下の気持ちも、アルン様の気持ちも全然わからないし、良いことかわからないけどそういう未来もあるかも知れないのね。



 まだ未来の事はわからないけど、きっと素敵になる、そんな予感がする。


 











 



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