第24話

 会場に向かうと相変わらず人が溢れてる。というか決勝だからか、昨日より明らかに人が多い。


「あ、ジェイク!」


 屋台の前にどっかで見た坊主頭が見える。背が高いし坊主は目立つ。


「お?コーデリア、だっけか?オルシュレン嬢も…マリアも」


 なんとなく目が合わせられない…べ、別に何でもないのに…そ、そう、コーデリアやアルン様のせいだから!今朝あんな事言うから!


「だっけ?って何よ、ひどいジェイクん!」

「ジェイクんって何!?」


 コーデリアに変な愛称?をつけられて慌てるジェイクを見て思わず笑ってしまう。ジェイクもコーデリア相手だと慌てるのね。


「これからランダード様の試合を皆で観に行くのですがジェイク様もご一緒にどうですか?」


 アルン様がチラッと私を見る。だからやめて?アルン様も気を利かせてあげましたよ?みたいな顔しないで?ちゃんと説明したでしょ!いや一緒に行くのはいいけども。


 結局四人で決勝を観戦する。決勝前の会場で開会式が始まり騎士達が整列する。


「ランダード様、大丈夫かなあ?」

「コーデリアさん…心配なのですね?そう言えば昨日ランダード様、怪我されてましたね…」

「うん…」

「え、そうなの!?」


 最初の試合、なんなく勝ってたのにあの後なんかあったんだ…。


「まあ試合て言っても模擬戦なんだろ?死にはしないさ」

「ジェイクんは冷たい!冷たい!」

「ええっ!?オレは安心させようとだな?」

「負けたらジェイクんのせいだからね?」

「なんでだよ!?」


 コーデリアのペースに巻き込まれたな…そう言えばジェイクは帯剣してるけど騎士科じゃないのかしら?というかそもそも帝国で貴族なのかしら?あんまり貴族っぽくない。王国に潜入とかしてるから諜報員だよね?貴族が潜入したりする?というか帝国の貴族体制とか全然知らない。なんとなく探りを入れてみようかな?


「ジェイクは剣とか使って戦ったりできるの?」

「ん?ああ、一応はな」


 まあ単身で王国に来てるもんね、そうだよね。


「帝国も騎士とか大会あったりするの?」

「うーん…そういうのはないかなあ。実戦訓練はあるけど。うちはまあ、あちこち手を出してるからそんな暇はないな」


 そういえば帝国は日々版図を広げていく。大陸を統一する勢いだ。いや、統一する気なのだろう。王国もどうなるかわからない。


「じゃあさ、ジェイクんは強いの?」


 コーデリアが聞く。確かに身長だけでなく筋肉はダドくんに負けてないと思う。昨日背中に抱きついた時思った。いや、抱きついたって馬に乗せて貰った時ね!?


「うーん?さあ?どうかな。オレは騎士じゃないからな。基本的に正々堂々戦う事はないからな」

「え、何それ卑怯な事する?」


 コーデリアが目を丸くする。


「生き残るためにはなんでもするよ?」


 当たり前だろ?見たいな顔で言う。え、つまり前線で戦場にでるの?


「ああ、そうだな、オレも帝国軍人だからな、戦場にはでるからな」


 私が疑問に思ったのが判ったのか、答える。


「戦場に出るって…ジェイクは帝国貴族じゃないの?」


 思わずストレートに聞いてみた。


「一応貴族だよ。こっちでいうと侯爵くらいかな?」

「ええっ!?めっちゃ私より上じゃん!ジェイクん様だった?」

「いやジェイクん様ってなんだよ、そんな事言うならコーデリアちゃんって呼ぶぞ?」

「うっわ、ちゃん呼びは恥ずかしい!止めて!ジェイクん!!」


 はははっと笑うジェイク。コーデリアに負けてないな、やるな。


「そろそろ始まりますよ、皆さん!」


 アルン様が声をかける。一試合目からダドくんだ!相手は…え。


「あれは…クリュート様!」


 ダドくんの…お兄様!?いきなり兄弟対決!というか、クリュート様は…確か殿下のご友人の一人で婚約破棄の時、リーリ同様一緒に殿下と居た。チラッとアルン様を見る。ちょっと顔が青ざめてる。が、私と目が合うと大丈夫、と目配せする。


「行け!倒せダド!」


めっちゃ声を上げて応援する。これはアルン様が見てる前でクリュート様は是非倒して貰いたい!!


 一礼し、試合開始の鐘がなる。大剣を構えるダドくんに対しやはり同じ兄弟でグランデの人間、同じく大剣を構えるクリュート様。

 お互い隙を伺う…と先にダドくんが仕掛けた!一気に間合いを詰め、薙ぎ払う。読んでいるとばかりに剣を受け止め、予選で見せたダドくんのようにそのままの勢いで打ち込むクリュート様。が、ダドくんもそれをかわし、間合いを空ける。


「すごい…」


 ダドくん、やっぱり強いんじゃあ? 

 今度はクリュート様が激しく切り込む。何とか受け流すが、返しの剣先がダドくんの体勢を崩す。危ない!その刹那、クリュート様の大剣がダドくんの肩を肩を打つ…様に見えたが逆に相手の体に飛び込み間合いを潰す。と同時にクリュート様が体勢を崩す。すかさずダドくんが打ち込む剣が腕を叩き剣を落とす。


 歓声が上がる。


「やった!やったね、ランダード様!」


 コーデリアが喜ぶ。アルン様も心なしかホッとしてる。兄弟対決はダドくんが制した。よくやったぞ!ダドくん!アルン様を断罪した時殿下と一緒にいたクリュート様を倒してくれて、少し胸がすく。

 そう言えば怪我したって聞いてたけど、大丈夫そうね。良かった。


 そのまま二回戦も無難に勝ち進む。何やかんやでクリュート様、強かったんじゃない?その後は圧勝だったぞダドくん…決勝まで勝ち進み、優勝に王手がかかる。負けても準優勝だ!すごい!


「うわ、ドキドキしてきた!勝ったら優勝だよ!?」

「すごい、ランダード様…!」


ついに決勝。これ勝ったら…優勝。そしたらコーデリアとお食事デートかな?


 決勝が始まる。相手は…騎士科最強の声が高い、コーデリアいわくイケ騎士No. 1のバード様。勝てる?ダドくん?

 






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