第23話
あれからジェイクと別れて自室に戻ったけどそのまま寝てしまった。
朝、目が覚めたけど布団の中で色々考える。やっぱり納得いかない。何で好きな人を辛い目に合わせるのか。愛してるってなんだろう?貴族社会は基本的に政略結婚だったり親同士の取り決めだったりが多くて恋愛もあるけど少数派だ。学園でパートナーを見つけたとして上手くいくケースは半々ってところだろう。私だって、誰か好きな人が出来たりしても親が反対したり別の人を勧めて来たら多分逆らえない。
ただ、人を好きになる、友達とかじゃなくて恋人とか片想いとかして愛するって経験はまだ私にはない。だから余計に解らない。相手に辛い思いをさせてまで、一緒に居たいものなのだろうか。その人を傷つけてまで離れたくないって思うのだろうか?
リーリは許せない、それは変わらない。けど、私には解らない。人を好きになった事がない私にはそれが普通なのか、普通でなくても十分あり得る事なのか、リーリが異常なのか解らない。恋する事が、愛する事がそんなにまで自分を見失うものなのかが…。
私も…誰かを好きになったりしたらそんな風になったりするのかな?誰かを傷つけたりするのかな?
誰かを…好きになるのかな?
ふとジェイクの顔を思い出す。
「いやいやいやいや!待って?違うから!そんなんじゃないから!」
布団をかぶり直しながら思わず一人で叫ぶ。そう、ち、違う。ただ、恥ずかしい所を見られただけだから!そうだ、昨日めっちゃ泣いてるのを見られたし、なんか変なこと口走ったりしたから恥ずかしいだけで!!そういうのじゃないから!!
そ、それはそれとして…落ち着け私、何か…忘れてる気がする…。
「え、えーと…」
整理しよ?私!昨日リーリ嬢を追いかけて行ったはいい、仕方ない。必要だった…けど、確かその前にダドくんの試合見てて。
「うああああああ!!」
アルン様に飲み物買ってくるって言ってそのままほったらかしに!!
「うぅ…」
布団を再びかぶり潜り込む。
合わせる顔がない…あの後…どうなったんだろ…今日はもう部屋から、布団から出たくないぞ!色んな意味で!
チリンと呼び鈴が鳴る。え、朝から誰?洗濯物かな?仕方ない、起きよう。
「あ、居た!おはよマリア」
「コーデリア…」
ドアを開けるとコーデリア。後ろにはアルン様も…。
「申し訳ありませんでしたっ!!」
土下座するかの勢いで頭を下げる。顔が熱い。アルン様の顔を見れない。飲み物をすっぽかした事も、リーリの事でも。
「心配したんだよ?あれから全然帰ってこないし」
ごめん、コーデリア。
「本当ですよ…何かあったのかと心配で探しまくりましたから…」
も、申し訳ない、アルン様!
「「で、何があったの?ジェイクと!?」」
んんん?二人でハモるほど?しかも何か目がキラキラしてるし…え?どういう事?え、何でジェイクの名前が出るの!?また顔が熱くなる。
「なかなか帰って来ないから探しに行ったらジェイクと二人で馬に乗って行ったて聞いたから…」
「あ」
「お二人で…その…何処かに逢引きしてたのかな?と…」
あ、あ、あ、ああ逢引き!?逢引きって何!?いやいやいや待って、なんでそんな話になっちゃってるの!?
「ち、違うから!そ、そ、そうゆうのじゃないから!」
「へ〜ホントかなあ?顔が赤いよ?」
「いやいやいやいや!そりゃいきなりそんな事言われたら赤くなるよ、いやでも違うからね?」
決してさっきの布団の中での事を思い出した訳ではない。いやホント違うから!
「マリアさん、私達友達でしょ?隠さなくても大丈夫、応援しますわ」
ちょ、アルン様!?
「帝国人だもんね…禁断の恋ッ!」
だから待って、コーデリア!なんで盛り上げてくるのよ!禁断って何!?だから違うってば!
…とは言え、これはちゃんと説明しないとね。でも…どこまで言っていいものかどうか。
「…」
「そんな事になってたんだ…」
一応…順を追って説明する。リーリ嬢の事。リーリの気持ちは…はぐらかして。
「わからない。私にはわからないわ。何故あんな仕打ちを受けたのか…マリアさんの言う通り私には辛いだけでしたから…」
「何でそんなにアルン様にこだわってたんだろね?」
チラッとコーデリアがこちらを目で訴える。何か納得いかない、言ってない事があるんじゃない?って顔で。それでも口に出して聞いてこないのは多分私を信用してくれてるからだ。言わないのはアルン様の為だと。
「結局リーリは実家に帰ったのよね?」
「うん…」
「修道院に送られたりしない?」
「あ」
「これで益々アルン様を修道院に行かせられない理由ができちゃったね?」
全くだわ…コーデリアに言われて初めて気づいたわ。もちろん修道院に送られるとは限らない。ひょっとしたら実家で暮らすかも知れない。
でも可能性はある。むしろアルン様が送られて来るかもと嬉々として行きそうだ。これはちょっと洒落にならない、本当にアルン様を修道院に行かせる訳に行かなくなった。いや元から行かせる気ないけど。
「まあ、それはそれで置いといてぇ」
え、置いとくの…相変わらず切り替え早いなコーデリア。
「ランダード様は見事勝ち進みました!今日決勝トーナメントだよ!」
おお!やるなあダドくん。やはりコーデリアとデートがかかってるからか?決勝は昼からで8人でトーナメント形式だよね?あ、すごい、全学園生徒でベスト8は確定してるんだ。さすがイケ騎士?トップ3の一人。
「昼からだよね。今日は最後までちゃんと観よう…」
「今日はジェイクとどっか行かないの?」
「だから違うから!」
行かないからね!?
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