3日目 Chicken Tail Rhapsody

「バラバラ殺人のやり方を教えてもらったのもそうですし、それを自分に実行してほしいとも言われました。」

「あたしは、その、言われてないけど。」

「僕ほど、人間の解体をするのが上手くないということではないですか。」

 僕は思いっきり背中を叩かれた。

 咳が止まらなくなるが、僕の彼女は全く気にしていないという風で、ため息を一つ付くと腕を組んでみせる。

 重要なのは、この場合。

 僕が幼馴染の父親と繋がっていたということではない。

 幼馴染の父親に、バラバラ殺人の方法を教えてもらった弟子として。

 僕と僕の彼女には繋がりがあったということだ。

「僕に告白したのはそういうことですか。」

「そういうこと。」

 彼女は裏で、幼馴染の父親に僕のことを紹介されていたらしい。

 君と同じくらいの年齢で、いい男がいる。彼も君にもパートナーがいないのなら丁度いいんじゃないか。彼は見た目もそこまで悪くはないし、むしろいい。相手のいない高校生活なんて味気ないと思うんだけれど。

 幼馴染の父親はそんなことを呟いたそうだ。

 もういもしない息子と娘に対する愛を今になって僕と彼女に向けて見たのかもしれない。

 とにかく、少なくとも彼女は。

 まんまとその影響をもろに受け。

 僕に告白をした。

 計算もあるのだと思う。

 バラバラ殺人を上手くやる方法を教えてもらうという、凡そまともではない、そんなサークル活動もどきにおいて。

 理解者は早いうちからいた方がいい、と考えたのではないだろうか。

「人はやったんですか。」

「まさか。ちょっとリスクが。」

「僕もです。」

「あんたは、なんであの人に教えてもらってたわけ。」

「昔、その状況を見てしまって、そこで何か素質のようなものを見抜かれたのかもしれません。そのままずるずると。」

「あたしも、あの人に飼い犬をやられて、それを見ちゃってから、そのままなんか、ずるずる一緒にいることが多くなってた。」

「人間的魅力は。」

「そう、結局、魅力のある人だったからね。そこは、あたしも思う。」

 幼馴染のお父さんが、自分を殺す相手に僕を指名したのは、おそらく自分が教えたバラバラ殺人のノウハウをしっかりと学んでくれていると感じられたから。

 殺してほしいと言ってきたのは、近いうちに警察に捕まると、どこからか情報でも流れてきたのかもしれない。詳しいことは分からない。分からないが、簡単に死を選ぶような人間ではない、ということは分かっている。

 百も承知だ。

 何かしらの理由があってしかるべきだ。

 今の僕にも、そして彼女にも理解できないが、それを知る時が来るのだと思う。

 それが。

 形式上でも弟子という存在になったことで生まれた運命の突き当たる点なのだと思う。

 悪い人だと知っていても、同じ人間だという認識の方が勝っている。

 結局のところ、僕にとってはそうでしかない。

「警察、捜査してたわね。」

「上手くやったから大丈夫だと思います。」

「それよか、付き合ってるのに、なんで敬語なわけ。」

「さあ。なんででしょうね。」

 下らないことを聞く人だと、そう思った。

「下らないことを聞く人だと、そう思ったんでしょ。」

「思ってないです。」

 学校からの帰宅する道の途中、僕と彼女はそんなことを喋る。

 隣をパトカーが走って行った。

「あ。パパ乗ってた。」

 その瞬間。

 彼女にキスされる。

 そして。

 僕は二十七日後に絶対死ぬ。

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