魄ノ第五章 『運』

 自分の、魂の仕事について考えるようになったのは、二十八歳の時に出会った人がきっかけだ。

 勤め先の住宅展示場の、センターハウスのお姉さんと話をしていた際、ふと彼女が、僕の穏やかならぬ運の悪い人生は先祖霊のせいではないかと言ったのだ。

 彼女も今までうまくいかなかったことが多かったが、ある人を紹介してもらって相談して、それが先祖霊原因とわかって解消したという話だった。

 

 ちょうど、その頃、仕事や人生に迷っていた。

 周りは次々と結婚して家庭を持っていく中で、どうして自分は、こんなに仕事もプライベートも波乱含みなことが多いのかと。安定した生活を送りたい気持ちが強くなっている時期だった。

 

 僕は、最初の会社では事務で採用が決まっていたにも関わらず、入社一か月前に『辞めるはずだった事務員が辞めなくなったから、営業をしてくれ』と言われ営業。

 ちょうど一年経った頃、ひと月に二度の交通事故を起こし、部署異動。

 その後転職するも、今度は半年で無免許運転の車に突っ込まれ、またもや事故原因で異動。その後リーマンショックで契約解除。

 その次に就職した先は、取引先とのトラブルで、試用期間を勝手に引き延ばした上雇えなくなったから辞めてくれと言い、再び就活。

 すぐに次は決まったが、朝8時出勤の深夜2時退勤になることもある超ブラック企業で半年で転職を決意。

 再度転職したものの、採用先で正社員になれず、先行きを悩んでいた。


 紹介してもらった方に相談して言われたことはまとめると一言。

『それは、あなたの魂が恋愛や、家庭やそういったことをこの人生で目的にしていないからよ。仕事で成功することが目的なの』

 自分の人生の波乱は、自分自身の魂が、自分を成長させるために招いたことだということだった。

 実際、不本意ながらその波乱の中で色んなことをすることになった為、同世代に比べても同じ会社の人に比べても、知識の幅や経験は多く積めていた。その時不思議と、なるほどそうか、人生の目的をもって生まれてきている物なのだと、妙に納得したのだ。


 その紹介してもらった方の所属する団体は、霊感がある無しに関わらず、誰でも研修を受ければ自分の魂と対話できるようになるという会だったが、その時はちょっと宗教っぽくて嫌だなと思ったこともあり、その後、しばらくは行き詰るとその方に相談料を払って相談に行っていた。


 何か違うと思い始めたのは三十一歳の頃だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る