4.絶対の武器をかざす者
今ここで起きている現象は、いわゆるメタ・・・つまり、この世界を作った者と、その事情を知る者(俺)にしか関与できない範囲だ。この場で得られる全てが、転生が完了し、その後の世界・・・ジェネバレル星に落ちてからは得ることのできない・・・そもそも最初からジェネバレル星に生を受けた者には触れることすらできない、別次元の情報だ。
今は理解できずとも、後々貴重な物になるとしても不思議ではない。異世界転生を確信することにより開放されたリソースを、その収集に注ぎ込む。・・・出来ることは限られるが、その制限下で、いまだAI任せで姿を表さない観察者との知恵比べというのも面白い。
ただ、それには・・・一つ確認すべきことがある。
「情報購入。俺は転生したんだな? 転移ではないな?」
《情報開示。この回答によるコストの消費は発生しません。あなたは地球での生を終え、この地に転生者として誕生しました。厳密には転生の途中状態です。ジェネバレル星に降り立った時点で転生が完了します》
うーん・・・心当たりがまるでない。一瞬で死んだか、意識がない状態で死んだか。一つ言えるのは、俺が今身に纏っているこのジャージは部屋着ということだ。部屋の中で一瞬で死ねるようなアトラクションなど記憶にない。ということは、寝ている内になんらかの形で死んだのかな。
・・・まぁいい。この回答を得たことにより、大きな枷が一つ消えた。
ああ、ついでに聞いておくか。
「情報購入。俺の地球での死に、今回の俺の転生に関わる存在が関与しているか?」
《情報開示。この回答によるコストの消費は発生しません。あなたの地球での死に、此度の転生に関わった存在の意志は関与しておりません》
「情報購入。俺はどうして死んだ?」
《開示できない情報です。この回答によるコストの消費は発生しません》
ん・・・自分のこととくくれるカテゴリの質問については回答がもらえると勝手に予想したが、そんなことはなかったな。
まぁいい。正直なところそれほど関心がない。例え、理不尽に殺されていたとしても復讐できるわけでもないしな。家族でも残していれば悔いも残るのかもしれんが・・・持たざる者にはわからん感情だ。それに、忘れてるだけで思い出したらとんでもないトラウマになるなんてトラップもあり得るしな。
あ、それじゃこれはどうだ?
「情報購入。今回の俺の転生に関わる存在は、俺がどうして死んだのか知っているか? もしくは知っていると推測できるか?」
「情報開示。この回答によるコストの消費は発生しません。此度の転生に関わった存在の中には、あなたの死に関する情報を持っている者もいると推測されます」
「情報購入。この場で今、俺が俺の死に関する情報を知る術はあるか?」
「情報開示。この回答によるコストの消費は発生しません。この場で今、あなたがあなたの死に関する情報を知る術はありません」
なるほど。俺の死からこちらに転生させる間に、少なくとも情報を共有しない2つ以上の存在が関わっているわけだ。そして、俺の死の情報を持っていると推測できるのは、死後の俺に直で接した存在。そいつを介してこちらに持ってきた存在には知り得ない情報ということか。このAIとその管理者は知らない、というシチュエーションは充分あり得るわけだ。
しかし、知らない情報を知らないと答えないというのは・・・厳格というべきか、融通が利かないと言うべきか。だが、誠意ある回答をする意図も確かにうかがえる。
ふむ。ちょっとしつこいようだが・・・相手の性格や能力を知るうえでは有意義な質問だった。普通なら自分の死なんて気になって当たり前だから、質問内容もそう違和感を持たれるものでもなかったはずだ。
そろそろ本題に入るとしよう。
「情報購入。俺を転生させた目的を教えてくれ」
《情報開示。この回答によるコストの消費は発生しません。ジェネバレル星で魔王となっていただくのが目的です。条件が満たされました。今件の詳細の開示が可能です。開示を求めますか? 該当の情報の開示にはコストを消費しません》
ふむ・・・微妙に答えを逸らしてきたな。情報を限定しないことで逆に逃げ道つくっちゃったか。コスト消費しないって言ってるからやり直し効くけど。それじゃもう少し具体的に・・・
「情報購入。俺をジェネバレル星で魔王にする目的を教えてくれ」
《開示できない情報です。この回答によるコストの消費は発生しません》
やはりこれが核心に近いか。
「情報購入。そこをなんとか(*´ω`*)」
《開示不能情報への再度の開示要求と判断。開示できない情報です。この回答によるコストの消費は発生しません》
「情報購入。お願い(*´ω`*)」
《開示不能情報への再度の開示要求と判断。開示できない情報です。この回答によるコストの消費は発生しません》
「情報購入。そんなこと言わずに(*´ω`*)」
《開示不能情報への再度の開示要求と判断。開示できない情報です。警告。今件への以後の開示要求にはペナルティが発生します。この回答によるコストの消費は発生しません》
「情報購入。ペナルティ! 甘んじて受け入れましょう!('◇')ゞ だからとっとと・か・い・じ♪」
《開示不能情報への再度の開示要求と判断。開示できない情報です。今件における情報開示希望者仮名「小鳥遊国広」を「世界の意志」の脅威と認定。魔王属性及び、所持コストを全て没収します。最終警告。以後、今件への開示要求を再度実行すると、あなたは消滅します。この回答によるコストの消費は発生しません》
「情報購入。いいからおっしえろよ~い(=゚ω゚)ノ♪」
《開示不能情報への再度の開示要求と判断。条件が満たされました。担当者に繋ぎます。これらの処理によるコストの消費は発生しません》
「( ,,`・ω・´)ンンン?」
《(ピッ)ッバーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!》
切り替え音と思わしき電子音の直後、堰を切ったかのように発せられた、スピーカーを破壊せんばかりの少女の罵声が部屋中に響き渡った。
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