第69話 エリナの悩み

 エリナは悩んでいた。


「どうして私はこうなったの?」


 確かにチートなスキルを持ってるけど、お兄ちゃんみたいにヤラカシテ無いよね。

 学校が休みのときに異世界に来て、ルミちゃん(スクルド)とコスとポーズを決めてただけなのに。

 少女にされて、魔法学院に通って、大人しく平民の振りをしないといけないなんて。


(エリナは自らアルフヘイムを訪れ、自分から【イズンの林檎】を食べたことを棚上げしてしまっていた)



 ロッテちゃん(シャルロッテ)は皆から注目されてるけど。

 私の方が魔力が高いのに、【認識阻害】のお陰で誰も私に注目してくれないし、覚えてくれないし。



 はぁぁ、コミケに参加したいな~。

 衣装はいっぱいあるけど。大人サイズで着れないしな~。

 暇だから、とりあえず少女サイズに、お直しするかな~。

 目立っちゃいけないって、辛いな~。

 授業も実習以外はつまらないしな~。

 学院に通ってる平凡な女生徒か~。


 ……プチキュン(魔法少女アニメ)みたいに活躍したら楽しいだろうな~。

 年齢もちょうどアニメと同じぐらいなんだけど~。

 はっ、顔バレしないようにコスプレすれば……。

 えへへへへ。



「エリナちゃん?」

 隣の席のユキ(ブリュンヒルデ)が声を掛けてきた。


「お姉ちゃんとお兄ちゃんの分も作っとくね~」


「何を?」


「プチキュンのコスチューム」

「まぁ」





 エリナは学院の授業が終わると、トイレからフォレブ草原の研修所に【転移】した。

 エリナは地下の創作部屋に入り、プチキュンのコスチュームのお直しを始める。



 シュィイイイイインッ!


「おっ、ちびっ子。コミケの衣装か?」

 転移してきたヤマちゃん(オーディン)に声を掛けられた。


「本当のちびっ子に成っちゃったんで、年齢制限でコミケにも出れませ~ん!」

 エリナはワザとらしく拗ねて見せる。


「うんっ! サークル参加以外は大丈夫じゃぞ。 コスプレも参加出来るはずじゃ」


「そうなの~? じゃあ、【転移】して参加してもいいんですか~?」


「勿論じゃ。もう罰を受けたのだから、何でも自由にするが良い」



「え~、平民として大人しくしてなくてもいいの~?」


「はははっ、その姿じゃ誰だか分からんじゃろう。ゼロからのスタートだと思えば良いのじゃ。ワシだってラグナロク後に、好き勝手しておるぞ」


「なんだ~、いいんだ~」


「ふむ、一応ワシの様に顔を変えるとか、隠すとかした方が良いかもな。又、貴族にされても困るじゃろう。ユウリとユキも赤の他人として活動して、貴族に取り立てられぬ様にすれば構わぬ。ゼロから始める異世界生活じゃ」



「それじゃあ、プチキュンになって、『チートでわたしツエェェェ!』って言ってもいいの~?」


「オッケーじゃあ。ただし、人族の支配者層に取り込まれない様にするのじゃぞ」


「は~い。 それと~、今度のコミケでコスプレする時は、保護者になってくださ~い」


「分かった、それもオッケーじゃあ。一緒に【異世界転移】しようぞい」


「ヤマちゃん、大好き~。チュッ!」


 エリナはヤマちゃんのホッペにキスをした。



 〇 ▼ 〇



「と、言う事だから、お兄ちゃん」


「俺達は子供の事が心配だから、当分は今のままでいいよ」


「そうなの~。でも衣装を作ったから、インベントリーに収納しておいてね」


「うん、ありがとう」



「お姉ちゃんもね~。子供のピンチの時は、変身して助けて上げれるでしょう」


「そうですね、ありがとう」


 そこはノルマンド公爵邸の私室で、ユウリの家族が揃っていた。



「カール、ロッテ。貴方達のコスチュームも作ったからインベントリーに入れて置きなさい。人並み以上の力を使う時は、変身しなさいね」


「おば様、インベントリーって?」

「ロッテ! おば様って呼ばないでっ!」


「あっ、ご免なさい。異世界一綺麗なエリナお姉様っ!」


「まぁ、お上手ね。うふふ、お世辞でも嬉しいわ……インベントリーは無限収納箱の事よ。2人供持ってるわよ」



「まぁ、お姉様は私達のステータスを見れるのですね?」


「そうよ、自分や相手のレベルとスキルにも拠るけど【鑑定】スキルで見る事が出来るのよ。自分自身を【鑑定】してごらんなさい」



「自分のステータスを【鑑定】!」


 ピッキィイイイイインッ!



シャルロッテ・ノルマンド

Lv2

職業 魔法学院生徒

種族 人間

HP100 MP100


[パッシブスキル]

ステータスウインドウ

レーダーマップ

インベントリーボックス

物理耐性 魔力耐性

状態異常耐性

体力回復 魔力回復

状態回復

詠唱省略 魔法遅延省略

魔力消費減 経験値倍

成長速度倍 限定解除

気配感知 危険察知


[スキル]

鑑定Lv1

生活魔法Lv2


光魔法Lv1 火魔法Lv2

水魔法Lv1 風魔法Lv1

土魔法Lv1

空間魔法Lv1 時空魔法Lv1


剣術Lv2 弓術Lv2

盾術Lv2




「入学したばかりなのに、沢山のスキルがあります。[パッシブスキル]って、なんでしょう?」


「[パッシブスキル]は、常時発動してるスキルね」



「ステータスウインドウ? あっ、鑑定しなくても、大きな表示が見えますわ」


「どれどれ、うん。お兄ちゃんと同じパッシブスキルね。私とも一緒、はっきり言ってチートね」



「チート?」


「人間離れしてるって事……ユキお姉様、エリナに『異能の力』は見えないけれど?」


「『異能の力』は人智を超える力なので、無いほうが良いのです」



「『幻麗流、紅一閃』も表示されてませんわ」


「それは、私のステータスにもありませんね」


「ふ~ん、表示されない物もあるんだ~」


「そうですね」




「ロッテ、変身する時は、今着てる服を収納して、同時にコスチュームを装着するのです。出来れば、決めゼリフを発して、ポーズを決めるのよ」


「……難しそうですね」



「私が見せて上げるから、よ~く観察するのよ」


「はい……」


「ちょっと待ったぁあああっ!」

 バリバリバリバリッ!


 突如、部屋の壁際の空間が裂けて、ルミナ(スクルド)が現われた。



「エリちゃん、変身する時は私も一緒よ!」


「ロッテに見せるだけだから……でもコミケの練習になるから、一緒にやろ~ねぇ」


「それじゃあ、イクヨ~」



 エリナとルミナは壁際に並んでコッチを向いた。


「「ダブル・クレセント・ライトニング!!」」

 ピッカァアアアアアンッ!


 眩しい光が2人の後ろかあふれ広がり、光が2人を包む。

 そして、変身したフェアリークレストが現われた。


「月の天使!クレストオレンジ!」

「月の天使!クレストピンク!」


「「ふたりはフェアリークレスト!」」


「「闇の力の魔物たちよ! さっさとお宅に帰りなさい!」」



「ルミナ・キラリン・フォーリンスター!」

 光りの粒が集約し、ルミナが更にメタモルフォーゼする。


「光る命!キラリンルミナ! 天使の心と月の意志、ミンナをひとつにするために!」



「まぁ素敵。お姉様達、美しくて綺麗でカッコいいですぅ!」


 シャルロッテは初めて見る変身シーンに感動して、目がウルウルしていた。



「ルミちゃん、キラリンルミナのポーズを練習したんだ~」


「そうよ、エリちゃんがコミケに参加するって、オーディン様に聞いたから練習していたの」


「ふわふわのツインテールが可愛いね」


「うふふ、ありがとう」



「分かったかしら。後ろから【フラッシュ】と【ライト】の魔法を照らすのがコツね」


「はい」



「あとは、コスチュームを出す時に、直接体に装着する事ね」


「はい。やってみていいですか?」


「バンバン、やっていいよ~。私と一緒にやろうね~」


「はい」



 シャルロッテとエリナは壁際に並んで、コッチを向いた。


「「ダブル・クレセント・ライトニング!!」」

 ピッカァアアアアアンッ!


 眩しい光が2人の後ろかあふれ広がり、光が2人を包む。

 そして、変身したフェアリークレストが現われた。


「月の天使!クレストオレンジ!」

「月の天使!クレストピンク!」


「「ふたりはフェアリークレスト!」」


「「闇の力の魔物たちよ! さっさとお宅に帰りなさい!」」



「キャッ、キャッ、キャッ、楽し~い。上手くできたかしら」


「ジョウズジョウズ! 楽しいでしょう、テンション上がるでしょう」


「はい、とっても」



「じゃあ、ロッテも夏コミに一緒に出る~?」


「エリちゃん、ちょっと待って下さい」


 今迄黙って見ていたユキが口を挟んだ。



「ユキお姉様……夏休みだから日本に行ってもいいでしょう?」

 エリナが聞く。


「娘のコスプレはダメなのかしら?」

 ルミナが聞く。


「いいえ、私も練習したいから教えて下さい」


 ブゥウウウウウッ!


 ユウリが紅茶を吹き出した。



「いいのかよっ!」


「あら、コスチュームを貰ったんだから、変身を練習しませんと。貴方もね」



「「ワタシタチモ~?」」

 シャルロッテの妹達2人も真似したいらしい。


「そうね。 エリちゃん、この子達にも衣装を作って下さいな」


「は~い。じゃあプチキュンオールスターみたいにしようね~」


「「ワァァァイ!」」

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