第68話 学院のアイドル
「チャールズを狙いなさい、ノルマンド公爵夫人に成りなさいと、属国の令嬢達は国元から言われてるそうですよ」
と、ケイティが私に教えてくれました。
「まぁ、そうなんですか……考えてみると属国からの生徒達は、王女様ばかりですわね」
「アストリア国と縁を結びたいのでしょうが、特にノルマンド公爵が狙われてる様ですわ」
「うふふ、私達を相手にして下さる王子様はいらっしゃいませんね」
「はい、でも年上のクラスには他国の王子様達がいらっしゃいます」
「ケイティは外国の王子様がお相手でも良いのですか?」
「……此処だけの話です。内緒ですけど……私もカール様がいいですわ」
「まぁ、そうでしたの。それではこのクラスの女子は、ほとんどがカール狙いなのですね」
「はい、第2候補がレックスでしょうか……ところで、ロッテは意中の方がいらっしゃるのですか?」
「私達兄妹は成人してから相手を決める様にと、お母様から言われているのです」
「まぁ、それでは婚約者を作れませんね」
「はい、そうなのです」
ふと気が付くと、クラスの生徒達は会話をやめて、私達の話に聞き耳を立てていました。
「あら、それでは成人するまで恋愛も禁止ですの?」
「いいえ、自分達で将来を決めなさいと言われていますが。たぶん恋愛禁止ではありませんわ」
「まぁ、それは素晴らしいですわね。それに、ご両親は今……アルフヘイムにいらっしゃるとか?」
「えぇ、でもいつも身守られていると感じてますから、大丈夫ですわ」
「じゃあ、やっぱりご両親様は、ユリシーズ様とブリュンヒルデ様なのですね?」
カタリナは一段と声をひそめて聞いた。
「分かりませんわ。私が生まれる前の事は……」
「そうですわね」
「図書館のブリュンヒルデ様の肖像画は、美人でロッテに似てますわね」
「そんな事はありませんわ。ケイティの方が美人ですわ」
「「うふふふふ……」」
「そう言えば、側仕えの方もロッテに似てますね。髪の色は違いますけど」
「そうですね、ブロンドと黒の違いですわね」
「愛人のお子なのでしょうか?」
「いいえ、違うと思います……」
「ユリシーズ様はお子様が沢山いらっしゃたと聞いてますが、このクラスには居ないのですね?」
「はい、私より2歳以上年下になります……」
「稀代の英雄ですから、子供が沢山いてもおかしくありませんわね。私も10人以上兄弟がいますもの」
(王族の方は、そう言う事をあまり気になさらないようです)
後ろの席で、ユウリとユキは顔を真っ赤にして
ユキの腕が机の下で伸びてきて、ユウリの太ももをキツクつねった。
「っつ!……」
「それでは、ロッテの意中の方は、何処にいらっしゃるのですか?」
「……まだいませんわ」
「あら、ズルイ。私も教えてあげたのに、秘密を守りますから教えて下さい」
「本当にまだいませんの、その時は最初に教えて差し上げますから」
「そう、それでは約束ですよ。うふふ……」
カールは聞こえてないのでしょうか? いつもの様に上の空で静かにしてます。
午後になって、いつもの様に魔法の基礎の授業が始まります。
今日は座学で、魔法発動の為の基本知識を教えて貰いました。
生活魔法に関しては、殆どの生徒が発動出来る様になりました。
魔法の基本知識を勉強したら、属性魔法を教えて貰うそうです。
私はどの属性が使えるのでしょうか、楽しみです。
上級貴族の子弟は複数の属性を使える者が多いと仰ってました。
魔法の基本知識を有る程度学んでから、属性魔法の説明を受けました。
今日はいよいよ、魔法適正をクリスタルで調べます。
一応プライバシーに配慮して、1人ずつ個室で調べるそうです。
私の番になりました。
鑑定クリスタルに両手で触ると7つの模様が浮かび上がり、7色の強い光が広がります。
とても眩しい光でした。
「シャルロッテの魔法適正は火・水・風・土・光・空間・時空の属性です。チャールズと一緒ですね」
とアイバー先生が言いました。
「そんなに沢山ですか?」
「はい、しかもラウダ魔術師団長を上回る光を発しました」
「カールはどうでしたか?」
「チャールズよりもシャルロッテの方が強く光ましたよ」
「まぁ、どうしましょう……」
「強き魔法は弱き民を助ける為に在ると言われています。自分の為だけではなく、弱い者の為に役立てて下さい」
「はい」
「それと、無属性魔法もある様ですね。個人魔法ですので、何が出来るのか楽しみですわ」
「はい」
部屋を出ると、先に終わっていたカールが近くに来て言いました。
「外まで虹の様な強い光が見えていたよ。ここにいる生徒達も見ていたんだ」
「そう、カールも7属性だったんでしょ?」
「うん」
「ステータスの内容は秘密にして良いと言われてますから、口外しない様にしましょうね」
「そうだね」
学院に通ってる王子達は、ほぼ全員がシャルロッテ狙いで間違いなかった。
両親がアルフヘイムに身を隠したと分かった時点で、特別な存在であると思われても仕方が無かった。
しかも、前からノルマンド公爵夫人はブリュンヒルデであると、噂が流れていたのだから。
さらに、婚約しない。自分で結婚相手を決める。恋愛自由などの噂が広がり、学院の男子全員の注目を集めてしまいます。
学院に通う男達は、用も無いのにシャルロッテのいるクラスの前を通るし、野外実習には、沢山の生徒達が群がって見ていました。
「ケイティ、沢山の方々が魔法実習の授業を見てますわね?」
「ええ、男子生徒もいらっしゃいます」
「女子生徒より男子生徒の方が多いのでは、ないでしょうか?」
「そうですわね、女子生徒はカールが目的なのでしょうが、男子生徒は誰を見てるのでしょうか?」
「……私達の方を見ているような?」
「私では無くて、ロッテを見てる様ですわ」
「ええっ! 私ですの?」
「それでは、今日は各属性の低レベル攻撃魔法の練習をしましょう。属性の無かった人もチャレンジして下さい、後天的に出来る様に成る事も有るのですから」
アイバー先生が生徒達に声を掛けました。
「ケイティは火属性でしたっけ?」
「はい、ファイヤーボールを試して見ますわ」
「それでは、私もファイヤーボールにしますね」
先にケイティが詠唱した。
「火の精霊よ、燃える塊を作りて目標に飛び焼き尽くせ。ファイヤーボール!」
ボッ、シュゥゥゥッ! バァンッ!
「ロッテ、できましたわ!」
「ケイティ、お上手ですわね……それでは、私も。
火の精霊よ、燃える塊を作りて目標に飛び焼き尽くせ。ファイヤーボール!」
ヴワッ、シュゥウウウッ! ヴバァンッ!
「「「オオオォォゥ……」」」
ギャラリーから歓声が上がりました。
「ロッテ、私より弾も爆発も大きいですわ!」
「そう……でしょうか」
「それに、やっぱり男子生徒の目的はロッテでしたわね」
「……困りましたわ、お母様に目立たない様に言われてましたのに」
「しょうがないですわ、美人で沢山の属性魔法が使えるのですから」
「はぁ、私は結婚せずに冒険者に成りたいな~」
「えっ、それは無理ですわ。殿方達が許してくれませんわ」
「いっそ、違う世界に行けたらいいのに……」
「まぁ、ロッテたら、そんな事を言ってぇ」
「どうしても目立ってしまいますね」
ユキがユウリに言った。
「しょうがないよ、生まれ付きの能力だから。フレイヤ様も子供には、多めに見てくれるんじゃないかな」
「そうかも知れませんね」
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