古びた青い手鏡

荷物に紛れ込んでいた青い手鏡。


割れた鏡面は映した対象を屈折させ、増やし、賑わせていた。

怪訝な表情は小さな円の中で立錐の余地なしと言ったところであったが、

いくつもの鏡像は不意に頬を緩めた。


そうだ、私は笑ったのだ。


コートのポケットにフッと吸い込まれた鏡は、ほんの少しの重さで存在を主張した。

何故だか、仄かな幸福が胸から染み出て、ゆっくりと全身に満ちた。


きっとこの手鏡は、私に拾われることを待っていた。

得体のしれない手鏡だが、私はそう思うことができたのだった。

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