布地（ぬのじ）の罹患（りかん）証明書（しょうめいしょ）。黒い瞳（ひとみ）の病（やまい）を患（わずら）っている者（モノ）に与（あた）えられる烙印（らくいん）。

白い絹（きぬ）に赤い糸で縫（ぬ）い付（つ）けられた六芒星（ろくぼうせい）は、治癒（ちゆ）できない病を見守（みまも）る眼（め）である。

旧王家（きゅうおうけ）では黒い瞳は人ならざるモノへの変質（へんしつ）の証とし監視塔（かんしとう）へと送られ、肉体が滅（ほろ）ぶまで監禁（かんきん）された。

現在のル・イェを支配する新教会（しんきょうかい）の教義（きょうぎ）では祝福（しゅくふく）の予兆（よちょう）とされており、特別塔（とくべつとう）へと招待（しょうたい）され、肉体が滅ぶまで研究（けんきゅう）されている。

霧（きり）に覆（おおわ）われた黒い海から、陰気（いんき）な潮風（しおかぜ）が吹く街、廃（すた）れゆくル・イェの老人達は宣（のたま）った。

何（いづ）れにせよ黒い瞳を持つ者は悪夢への巡礼者となる運命（さだめ）である、と。

そして、その言葉は間違（まちが）ってないのだろう。

私自身、特別塔の固（かた）いベッドの中で悪夢を見出（みいだ）した一人なのだから。

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