鯨骨の時計

こわれた時計とけい

そのはりの動きはわらべている。


不規則ふきそく予想外よそうがいうごき、あるじであるわたしを気にすることなく気ままな時間を告げる。


しかし気に留めることはない。それは当然である。

もとより悪夢に時間の流れは無く、ときを気にする必要はない。


それでも私のような巡礼者は時計を身につける。


それは古術師こじゅつし達が信じる”まじない”であり、旅立つ者の心の支えの一つである。


最初の求道者ぐどうしゃが弟子のふところしのばせた時計が、窮地きゅうちあるじすくったように。

巡礼のおり、止めた時間にまた帰れるようにと時計を身に着けるのだ。

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