照らし出された鐘楼 -鐘の下-

悪夢あくむの森の只中ただなかそび人工的じんこうてき建造物けんぞうぶつ。そのかねした

私の目覚めざめた場所ばしょ


るされたかねがひとりでにひびき、深いやみに吸い込まれていく。

ゾッとするような情景じょうけいにすら、私は歓喜かんきおぼえずにはいられなかった。

浮足立うきあしだった私は、悪夢がむかえ入れてくれた、と都合つごう解釈かいしゃくをしてしまう。


都市としル・イェで見られる幾何学模様きかがくもようられた鐘楼しょうろう幻想げんそう只中ただなかでも主張しゅちょうつよい。


もしかしたら鐘楼しょうろうそのものも私と同じように悪夢に招聘しょうへいされたのではないかと思ってしまう。


めなければいけない。


立ち上がり、私は、ランタンをともす。いなに火が灯ったのだ。

深い森の中、膝下ひざしたまで成長せいちょうしたキノコ達が規則きそくただしくならび、みちを作っている。

それを視認しにんおもわずふるえる。その道は血痕けっこんにわまでつづくはずだからである。


当時とうじの私は信仰しんこうなく、それをないはなしだと一笑いっしょうした。


ル・イェに伝わる『悪夢の先達せんだつアントラセン』にまつわる駄法螺だぼら

それが、いまや私のしるべになっている。


稲妻いなづまたれたように、パッと視界しかいしろくなる。

徐々じょじょに取り戻していく世界の中で、確信かくしんいだく。


私の贖罪しょくざい約束やくそくされたのだと。

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