第24話 動けない



 シュルルルルルッ!



「なっ!」


 壁からベルトのような拘束具が勢い良く現れ、両肩、両腕、腰、両脚を縛られてしまった。


 僕は反射的に、この拘束から逃れようと腕や脚を動かした。

 ガタンッ、ガタンッと、音はするものの、僕の身体が自由には動かせないことを確認しただけだった。


「ちょっ、誰かッ…!」




 再び機械から声がした。

「シー、静かにネ。人来たら困るからねぇ」


 機械音のお姉さんの声が、男性の声に変わった。

 その声は落ち着いていて、というか少し楽しんでいるような声色とも取れる大人の男性の声だ。

 この機械、誰かが操作してる!


「誰ですか!ちょっ、この拘束、どうにかしてくださいよ!」



「拘束じゃあないよ、ちょっとした固定さ、シシシ」


 なにもおもしろくねーよ!そうツッコミを入れそうになったが、体の自由がきかない以上、僕は相手を刺激するべきではないと判断した。



「まあ、落ち着けって。久しぶりのノックで楽しみにしてたんだが、まさかこんなボウヤを寄越すなんてねぇ、意外だったんだよ、シシシ」


 …いったいなんのことなのだろうか…?

 この声の主は、何者なんだ?


「普通の身長、普通の体重、普通の身体能力、オツムも普通だな、話ぶりからして。顔は…平均以下ってところか、シシシ…」


 ウケてんじゃねーよ!直接言われるとショックだよ!


「あ、あなたは!どうなんですか!人に名乗らせて、顔も見せずに、姿も現さずに。一体何者なんですか!」


「俺は俺だよ、シシシ…安心しろ、顔はお前よりしっかり男前だ、シシシ」


 なんだよ、イケメンなのかよ、ちくしょう!

 なんでこんなことなってるんだよ、僕!


 しばらく拘束が取れないか抵抗してみたが、僕の力じゃ取れそうにない。



 はぁ…僕は何やってんだ…写真を撮るだけだと思ったのになんで縛られてるんだ僕…。

 僕は現状、縛られていて何もできず、しかも相手と会っていないのに、相手はイケメンできっと僕より優れていて…



 悲しくなって思わず、ガクンと頭を下げた。

 腕時計に視線を向けると、もうここを出る予定の時間を指していた。


 ああ、この調子だと、バイト間に合わないのかな…


「ぐすん…」

 ああ、少し泣けてきた。


「おいおい、どうしたよ、やめてくれよ、俺は人の涙には弱ぇんだ、おいどうした?」



「証明写真を撮りたかっただけなのに…このままじゃレイカさんにも、バイトのおばちゃんにも怒られる…」


「…レイカ?」


 ん?レイカさんのことを知ってるの?




 僕は顔をあげた。

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