第23話 危機⁈

「ううぅ…早く出たい…」


 中は予想どうり、とっても汚かったが、僕は早く済ませるために一心不乱にビニール袋から小銭を取り出し、投入した。

 足元のホコリや虫を見たくなかったので、半目でお金を入れていたが、手の感覚でどう考えても100円玉ではない硬貨が混ざっている事に気がついた。


 10円玉や…5円玉…?

 これ、この機械に入るのだろうか。


 そんな考えが一瞬頭を過ぎったが、撮影画面が起動しないため、残った小銭もスピードを落とす事なく投入し続けた。




 ティロロッロロン



 ビニール袋に入っていた最後の硬貨を入れると、機械が起動する音がした。

 よし、これでいいな。そう思ったので、椅子に座って、襟や髪を少し整えた。


 機械音のお姉さんの声が聞こえ始める。


「椅子に深く腰掛けてクダサイ」


 言われるがまま、僕はおしりをずりずりと滑らせ、背中を壁につけた。


 続けてお姉さんの声がする。


「画面の中心の線に、身体を合わせてクダサイ」


 画面を見ながら僕は指示に従った。


「よいしょ、これでいいかな」



「デハ、お名前を言ってクダサイ、ドウゾ」


 ん?名前を言う?

 僕は少し疑った、今思えばこの時点でもうちょっと疑っておけばよかったとすら思うが、素直な僕は、指示に従った。


「あ、ええと…僕、ですが…」


 これでいいかな… ?




 そう思った次の瞬間


「カシコマリマシタ」




 ・・・・・・・・・・・ッ


「なっ!」


僕は指示に従ったことに後悔した。


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