第18話 捉え方によっては美味しい

 僕とレイカさんは屋外にある自動販売機横のベンチに腰掛けている。

 遠くから運動部が部活動を行なっている声が聞こえてくるが、僕らの周りには人気はない。


 しばらく沈黙が続いた。



 レイカさんはグラウンドの方を向いている。

 僕は両膝の上に握りこぶしを置いている。



 気まずい…、何を話せばいいのか…

 昨日のことがやはり事実だったのだと、昨日起こった出来事をふつふつと再生し、

 不安、恐怖、踏み込んではいけないところに触れてしまった、そんな感情が湧いてきて、

 僕は身体が強ばってしまい、話し始めることができずにいた。


 ひとまずここは冷静に、話があると言われているのであれば、1人で取り乱してはいかん。

 落ち着け僕、とりあえず深呼吸だ、深呼吸。



 すーー、はーーーー。


 僕は胸に手をあてながら、大きく深呼吸をした。





 自分を客観的に評価して、気持ちを整理しよう。

 僕の今の感情を支配しているのは、不安、恐怖…焦り。



 焦り…?


 男、20歳、僕は生まれてこのかた女の子とベンチに横並びに座って2人きりでお話なんて、甘い場面を経験したことがないのである。


 そうじゃん!これだ、女の子と2人きり!

 この状況に焦っているんだ、僕は!



 恋愛シチュエーションゲームで言うなれば、今選ぶべき選択肢は、<黙る>ではなく、




 <話しかける>だ!!!!!!!!!!





 いけ!僕、今こそ勇気の使いどころだ!


「あのー…お話というのは…」




 彼女はボソッと言った。

「…楽しそう、大学生」



「へっ?」


「あら、ごめんなさい。話の結論から始めるわね。」


 レイカさんは、綺麗に揃えていた脚を振り上げ、脚を組んだ。




「私、僕くんの教育係になったから、よろしくね」


「…教育…係…?」



 人生が恋愛シチュエーションゲームと違う点は、セーブやロードができないということである。

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