第16話 友達



「ここ数日、忙しくしているのかね、お主は」


「ああ…まあまあかな。なあメガネ、チェックシャツ着てないと誰か分からなかったよ」



 僕は話を続けながら、メガネのとなりの席に腰かけた。



「それがしは季節に合わせた服装をしているだけである」


「去年は1年中チェックシャツだったよな。懐かしいよ。それ、今何してるの?」


 僕が質問すると、メガネは眼鏡を光らせ、待っていましたと言わんばかりに話し始めた。



「ぬははは、驚くなよ、それがしは今、明日の1限のための予習を行なっている!!!!」


「予習?明日の1限は僕も同じ授業を取ってたような…、まさか小テストか?!」


「そうだ、それがしは独自のルートにより、授業の内容を把握しているのだ、お主よりそれがしの方が一枚上手だったなあ!!!」


(※独自のルート→先生と仲の良い陽キャの会話内容の盗み聞き)


「お主とはここ数日会っていなかったが、何をしていたのだ。アニメの見過ぎか?のぉ!だいたいお主は…」


 メガネはよく喋る。


 くそぅ…、メガネ、僕より先に進みやがって、ちくしょう…!

 昔から確かにメガネは教室の隅で人の会話を盗み聞きして…要領の良い奴だったが……僕も同じスキルを持っていると思っていたのに…慢心だったか…、諜報員としてのスキルはメガネが上だったか…



 諜報員……諜報……ちょ………あっ!

 何か忘れてると思ったら!


 僕はメガネの方を向き、真剣な表情をした。


「そういえば、昨日の話を聞いて欲しいんだけど、いいか?」


「なんだ人の話を遮ってまでするような話であろうな?」


 メガネは自分語りを遮られ、少し不機嫌そうであったが、腕を組み、僕の

 方を向いてくれた。



「実は昨日のバイト後なんだけど…」


「ほう、バイト後に何か不都合でもあったか?」



 真剣に僕が昨日体験したことについて話そうとした、その時…



「こんにちは…」


 僕の後ろから声がした、もしかしたら、今声をかけられた?僕。


 声からして女の子、僕もメガネも女の子と接触する機会は極めて少ないため、少し警戒しながら声のする方へ振り返った。


 そこにいたのは、



 レイカさん…!


「あっ、あの…」


 僕は驚きのあまり、声がうまく出ず、喋ることができなかった。

 動揺して狼狽えていると、隣にもっと動揺しているメガネの表情が視界に入った。



 メガネの方に顔向けると、メガネ目を見開いて僕に何かを訴えているようだった。


(お主、いつのまに女と会話できるように…!)


 きっと、こう言ってるんだろうな…



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