第14話 あたたかくないと上手くぬれない

 …ピピピィ!ピピィッ!ピピィ!


 朝が来たようだ、目覚まし時計の音で目を覚ます。


 僕はのそっと動いた。目をこすり、大きくノビをした後スマホに手を伸ばす。時計の時刻は7:00。


「うわっ」


 やばい、遅刻する!僕はガバッと起き上がった。階段を駆け足で降りてリビングへ向かう。


「とりあえず朝ごはん食べなきゃ」


 僕はトースターに食パンをセットし、冷蔵庫からマーガリンを取り出して一息をついた。


 なぜかいつもより体がだるく、頭が回らない。なんだか大仕事でもした気分だ。


「はぁ、なんかだか疲れてるな、僕」

 フーッと、息を吐き手元に目線を落とす。そこで僕は自分の手首が少し赤くなっていることに気づく。はっと思い出し、思わず僕は鼻から息を吸い、両肩をすくませた。


 

そうだ、昨日…僕は…!




 僕は昨日あった出来事について一瞬でブワッと溢れるように思い出し、脳内で再生した。


「…夢じゃない、確かに僕は昨日バイトの後…」


 美少女と大柄のイケメン会い、話をした。

 縛られたり、命の危険も感じたが、“何でも屋”について、聞いた後…

 この新しいバイトをするかしないか迫られて…


 僕はやりますと言った。



 …あれ、そのあと僕は何をした?


「…どうやって帰ってきたっけ…」


 僕は自分の身体を確認する。

 昨日着ていた服でなく、いつものパジャマを着ていて…


 自分で自分の身体についてブツブツ言っていると部屋の隅にいる犬と目が合った。

 犬はこちらを見ていたが、フン、っと鼻から息をはき、またそっぽを向いた。


「…あ!頭!」

 僕は頭を触った。


「あれ」


 ベタベタしない、なぜだ。僕は昨日風呂に入った記憶がない。

 僕はお風呂に入った…のか?


 頭の整理が追いつかない、僕は疲れているだけなのか、どこまでが僕の現実か、



 僕はこめかみに手を添えて考えた。

 眉間にしわを寄せフローリングを見つめていたが、朝はどうも頭が回らない。


「…うーん…」


 僕が1人で考え込んでいると、玄関の方から声がした。


「先に出るから、鍵閉めて出てね〜」


 ん?かあちゃん、もう出るのか、早いな。

「わかったよ〜………ん?」



 僕は何かに気づきバッと時計を見る


「遅れるぅ!!!!!」


僕は大急ぎで、パンを取り出し、マーガリンを塗った。





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