第12話 これ〇〇だ!



 少しの沈黙の後、レイカさんはロクちゃんさんの方に視線を送り、眉間にしわを寄せて、何か言いたげな表情をした。ロクちゃんさんはその視線を感じ取り、焦りを見せた。

「いや、あの、あのだな。そういえばなにも言ってなかったな…いや、すまん。」


 やっぱり、言ってなかったのねと聞こえた気がした。レイカさんは、はーっと息を吐いた後説明してくれた。



「ここは“何でも屋”よ。依頼人から仕事を請け負って、それを遂行する。そういう仕事をしている場所よ。」



 何でも屋?話が読めんぞ、、、


「あなた、従業員募集のチラシか何かを見て電話したでしょ、新人バイト君?」


 …電話、した!新しいバイトを探して、電話をした、確かに。だけど…


「僕が応募したのは、建設設計事務所の雑務だったような…」



「 ん?“ハッピイ建設設計事務所”か?ふははは、そういう名前も持っているな。物事、1つの面から見ただけではわからんこともある、いい社会勉強になったな!」


 ロクちゃんさんはムキムキの腕を組んで、綺麗な歯を輝かせながら笑っている。

 レイカさんも再び手を動かし始め、微笑みながら作業を進める。


「この業界にそういう風に入る人も、たまにいるわね。さ、時間がないから契約をしましょう。こっちへきて、僕くん」


「あ、はい」

 はいじゃない、じゃないぞ。落ち着け僕、頭の中を整理するんだ。ええと、新しいバイトを探して、電話して繋がらなかったと思ったら話は通っていて、連れ去られて、思ってたのとバイトの内容が違って、で契約を結ぼうとしているのか。うん。


 ………。これは採用が決まったと捉えればいいのか?面接なしで、しかも迎えありで採用を教えてもらえたと捉えれば、、、僕ツイてるのかも?!危ない話になるかと思ったら意外と僕ってラッキーなのかも?美女と仕事ができて、お金が貰えて、デイズ二ーへの資金をためることができるぞ・・・いいんじゃないか、これは…


 契約内容を確認して、良さそうだったら明日にでもハンコを持ってこようかな…

 そうこう考えていたら、レイカさんに連れられて部屋の隅に連れてこられていた。


「ここに両手を置いて、壁の絵の、ここに目線を合わせて、この文章を呼んでもらえるかしら?」


 なにやら機械のような台についている板を指差し、両手を置くよう促された。壁にかけられた絵は女性の肖像画のようである。えーと文章は・・・


 促されるままに僕は指示に従った。デイズニー、ニッキー、もしかしたらレイカさんと…おおお、いいぞ!いい!

 そんなことを考えながら紙に書かれた長文を読んだ。


「『…この契約を交わし、新しい家族となる。互いを信頼し、尊重し合うことを誓い…』」


 ん?なんだこの文章、不思議な内容だなあ。はっ!給料や休みの取り方とか詳しいこと聞かなくては。


 僕は台に両手を置いたまま、長文の途中で質問をした。

「あの、仕事の内容とかを具体的に教えてもらうことってできますか?」


 レイカさんは顎に指を当てながら考え始めた。

「うーんそうねえ、最近やったのは掃除かしら、ねえロクちゃん、最近なにした?」


 掃除?得意じゃないがなんとかなるか…


「俺様も掃除はやったぞ、渡航記録を消して、情報を少し調整したな」

「それでしばらく遠くにいたのね、」


 ‥‥‥‥‥

 僕の表情は少しずつ硬くなっていった。自分でも全身が強ばっていくのが分かった、僕の本能が何かの空気を察知しているのだ。


「…その、掃除っていうのは、どこの、ですかね?」


 レイカさんは少し微笑みながら答えてくれた。

「ん?ちょっと言えないところ」




 これ、危ない仕事じゃねーか!!!!!!!!!!!!!!!!!

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