第10話 あなたは
「むにゃ…」
僕はやっと目を覚ました。
あれ、暗いな。手首、縛られてる?
どれくらい時間がたったのだろう。
お尻と背中には硬い感覚、僕は椅子に座っているみたいだ。縄で縛られている両手をどうにか動かして、解こうと試みたがどうもうまくいかない。まずいぞ、これはまずい。
僕が焦り始めたところで、知らない男の声がした。
「起きたか」
「ひっ!」
僕の声を聞き、知らない男はわずかに鼻で笑ったあと、話し始めた。
「ふはは、驚くのも無理はない。君は誘拐に似た状況にあるのだからな。まあ怖がることはない、この俺様が丁重にもてなしてやろう、ふは、ふは、ふはは!」
…よくわからないが、男は笑っているようだ。そこでドアの開いた音がした。
「ちょっと、うるさいわね!」
女の子の声だ。
「な、なんだ。お前はあっちに行っているがいい。ここはこの俺様が丁重に…」
「さっさとやんなさいよ、時間かかりすぎなのよ」
なんだ、揉めてるのか。
「大体、新入りが1人はいるだけじゃない、はやく契約を…ちょっと、まだこの子、麻袋被ったままじゃない」
足音が僕の方へ近づいてくる…!あわわわ、どどうすれば…!僕は何も見えない恐怖から
、とりあえず身を仰け反らせて逃げようとする。目の前で足音が止まった。
バサっ
僕に被せられていた麻袋がとられた。まぶしい!
目が慣れず、僕は思わず眉間にしわを寄せる。
「ごめんなさいねー、でもみんな通る道だから安心して」
女の子、スラッと伸びた脚、綺麗でまっすぐな髪、ワンピースを着ている。ん?どこかで…
「しかし、こいつで大丈夫なのか?肌は白く、身体も細く、いかにも弱そうであるが」
男が僕の顔を覗き込む、で、でかい!短髪、高身長、ムキムキ、イケメン…かあちゃん、悔しいよ、悔しい…
「あの…」
目が慣れてきたところで、僕はやっと声が出た。
「ああ、手のコレとるわね」
女の子は手際よく僕の腕の縄を解いてくれた。綺麗な髪だな。
「さ、とれたわよ」
女の子が顔を上げたところで、やっと僕は気づいた。
「あ、あなたは…」
間違いない、この可愛さ。大学で隣に座った女の子…!
僕が女の子の顔を見て驚いたことに、彼女らも気づいたようだ。
女の子は微笑んだ、スカートが少し揺れた。
「…自己紹介しましょうか!」
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