第8話 今日は晴れてて気温も高かった

 太陽が低くなり、空全体がオレンジ色になった頃、僕は大学からバイト先へ向かう。


 場所は変わってバイト先のバックヤードへ。

 自分のロッカーのドアを開けて荷物を入れ、エプロンを取り出した。慣れた手つきでエプロン首を通し、腰回りの紐を結んだ。いつも通り、出勤である。


「いらっしゃいませー」店内を歩きながら挨拶をする、誰に挨拶したと言うわけではないが、定期的に口が動くのである、これは無意識であることが多い、うん。今日は個数制限が、ブロッコリーと…玉ねぎか。あ、お米が安い日か、こりゃきついぞ。サービスカウンターで今日の情報を確認した後、レジの台の前に着いた。


「いらっしゃいませー、お預かりしまーす」


 こうして今日も元気に働くのであった。お時給お時給、そう念じながら、僕は心の中でニッキーに会える日を楽しみにしている、ニッキーのためだ、働け僕!


 ピッ、ピッ、ピッ、「こちら三点でーす」ピッ、ピッ…


 ほぼ無心でいつもの業務を行っていたが、僕はフッと思い出した。


 そういえば、連絡したバイト先、電話かけ直してみようかな。着信なかったよな、連絡先、もう一回確認してみよう。今月のバイト代は多いはず、貯金できるかな…


 僕はレジ打ちをしながらブツブツ言っていたため気づけなかったせいか、顔を覗き込まれながら話しかけられた。


「ちょっとすみません」

「あっ、はい」


 いかんいかん考え事に夢中だった、今は一応バイト中だ。僕はハッと我に帰った。


「領収書いただきたいのですが」

「はい、少々お待ちください、但し書きは…」


 気のせいかわからないが、ニッキーの「頑張れ、僕君、ハハッ」という声が聞こえたきがした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る