第2話
刑務官の仕事のほとんどは、彼らの生活における
一般社会のソレよりも
そして刑務所で生活していくうえで、収容者は大きく2通りにわけられる。
初めて犯罪を犯した者を「
初犯と累犯では収容される施設にも違いがある。
「初犯」の犯罪者を収容する「A施設」
「累犯」の犯罪者を収容する「B施設」
この2つの
場合によっては刑務官よりも収容者の方が刑務所のベテランだった、なんていう事も多々ある。だからこそ、彼らに舐められることの無いようにより一層に
刑務官は、そんな彼らに対し日々刑務所の
当たり前だが、時には
危険な職務だが、このようなこともある。
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年寄りの収容者が入っていた部屋から報知器が上った。
報知器の上がった部屋の、食器口と呼ばれる小窓を開き要件を確認する。
首の後ろにできたデキモノが痛いので投薬願箋が欲しいということだった。
後ろを見せたその首には確かに大きなデキモノが出来ていた。
程なくして、願箋を書かせた後に痛み止めの薬が来る。
薬を渡してやると、俺よりも何倍も歳上であるにも関わらず、必要以上に頭を下げるAの姿に、小さな罪悪感を覚えた。
それから、彼は時折夜中遅くに報知器を上げては。
デキモノがある部分が痛んで寝れないから、少し話し相手になってほしい、と自分語りをするのを聞いてやったりしたのだった。
数ヶ月の後、夜中の勤務の際にふと同じ居室から報知器が上がっている事に気がつく。
「報知器、用件は?」と聞くと、ひどくゆっくりと彼は語り始めた。
「オヤジさん、私はもう少しで仮出所ですよ。それでね、オヤジさんには世話になったから挨拶をしておきたいと思ったんです。私は身寄りがなくてね、今回の仮出所も決まるまで仕事やら住むとこやらで大変もめたんです。そんなもんで、シャバに出てもしょうがないんじゃないかと勝手に思っていたんですよ」
そこまで聞き、耳の痛い話だと思った。
刑務所は出所後の就職と身元引受人までサポートを行う。しかし、その後の彼らの生活がどうなったか、どうなるかまでは再犯を繰り返したりして再び刑務所に入ってこない限り全くわからないものなのだ。
「でもね、オヤジに話聞いてもらったりするうちにね、俺もやれるんじゃないか?って元気もらったんですよ。今度は出てからまた入ってなんぞ来ないようにがんばります。オヤジに迷惑かけたくありませんからね」
そう締めくくると彼は、「長々時間取らせてしまって申し訳ありません」と言った。
刑務官とは、厳しさの中にも人間的な温かみを持って彼ら収容者と接するのだ。
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