第3話 馬鹿な奴

お店を出てすぐの信号を待つ…「あっ!」真莉が何か思い出したように「ちょっと本屋に先に行ってて!買い忘れたものがあるから!」やれやれ…別に一緒に行かなくてもいいのに…信号が青に変わって真莉が小走りに横断歩道を渡る。みんなが渡りきったその時である…後ろで大きなクラクションが鳴った


振り返ると黒いワンボックス・カーのサングラスの男が窓から顔を出して怒鳴り出す。ゆっくりしか歩けない年配の女性が青信号の間に渡りきれなかったようだ。僕は少し戻ってびっくりしているお婆さんに声をかける…「大丈夫ですよ。さあ渡りましょう。良かったら僕に捕まって下さい。」「兄さん、ええんか?」僕は手を添えて「どうぞ!」とお婆さんを支えた。「お前のババアか?気をつけろよ!」とサングラスの男が怒鳴ってきたので

相手にするのも馬鹿らしいのだが「交番がそこにありますのでこの後、何があったか報告しておきます。なお、この車のナンバープレートもあなたの顔もバッチリこの近くの防犯カメラに映っています。」と言って男に向かって敬礼した。


男はチッと舌打ちして車を急発進させた…


信号を渡りきると僕は驚いた…

近くにいた人が僕に拍手をしてくれたのだ。

外国人の方までいてびっくりしてしまった。

当たり前の事をしただけなのに…

僕は一礼してお婆さんの無事を確認した。


お婆さんは僕に「ほんまにおおきにな。ありがとうやで。」と頭を下げて笑顔を見せてくれた。「いえいえ。じゃあお気をつけて!」


真莉が待ってるかもしれないなぁと本屋の方に向かって歩き出す…


「みーなーみ!」後ろから声が聞こえる。

振り返ると真莉がニヤニヤしながら立っていた。「あれ?お前、買い物は…」「あんな大きなクラクションを鳴らす馬鹿がどんな奴か見てたら、それに相手してる馬鹿な奴がいたから…」


「み、見てたのか…」

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