第7話 電話「ありきたりの結末」

俺はドキドキした。


あの時のまま、いや少しだけ大人になった竹内に違いなかった。

とても40後半には見えず、まだ社会人になりたてか、大学生のようのようだった。

ベージュのワンピースに白いパンプスが良く似合っていた。


「なあ、どこからどこまでが本当なんだよ。」

俺は脱力しながら質問した。


「どこからどこまでも本当。」

竹内が答えた。


「あ、でも松井さんを通じてだけど高橋くんたちには嘘をついちゃった。あれはやりすぎだったから、私から今度ちゃんとあやまらないと。」

松井がコクンうなづいた。


「高梨くんが高校の時に言っていたでしょ。」

「覚えてないかな?」


「いや、そもそも中学以来会ってないはずだけど。」

「会ったら絶対に覚えてるはずだよ。」


「文化祭に来た時のこと。私の学校の。」

いや、そんな覚えはなかった。


「どこの学校だっけ?」


「吉祥寺女子だよ。」

確かにその学校の文化祭には行った覚えがあった。

でもその時に会ったのは松井だけだったはず。

もしかして、、髪を結んで、眼鏡をかけていた女子って。

俺は松井に会ったと思ってたし、それに松井だと思って話していたはず。


「高梨くん私のことが好きで、他の女の人には興味が湧かない、このままずっと年をとっても変わらないって。」

「なんか私、、、他の人と間違えられていたみたいだったけど。」


俺は顔が真っ赤になるのを感じた。


「じゃあ、40過ぎてお互い独身だったら結婚しちゃうとか?って聞いたら、その時には俺から告白したいって、ね。」

「気持ち悪いって思われるかもしれないけど、私はそれをずっと覚えてたんだよ。」

「でももう40過ぎて随分経ったでしょ?段々頭に来るようになっちゃって。」


「そんな、、、前の話なのに。」


「でも実際まだ独身なんでしょ。だったら約束守るべきじゃない?」

竹内ってこんなに怖い子だったのか、、、。と思いつつも俺は少しうれしかった。


「あ、まあ、確かに約束は守らないとね。」

「一般的に、の話だけど。」

俺はこの流れに乗ってみることにした。


「竹内さん。ずっと好きでした。長いこと。」

「僕と結婚しください。」


竹内と話してからまだ30分も経たないのに、俺は何をやっているんだろう、と客観的に恥ずかしくなりつつも、楽しんでいた。


竹内はまさか本当にプロポーズされるとは思っていなかったのか、しばらく固まってしまった。そして、ゆっくりと口を開いた。

「ちょっと考えさせてください。」


「えっ?なんで?この話の流れなら受け入れる場面でしょ。」


「ううん。受け入れたくて仕方ないのはそうなんだけど。」


「だけど、高梨くんは中学卒業してからの私のこと知らないじゃない。」

「だから本当に相手が私でいいかわかるの?がっかりさせちゃうかもしれないよ。この長い間に、私のイメージや想像がいい方に広がってしまってたとしたら余計。」

「だから、私ときちんと付き合って。」

「その結果、私でもよければ、ね。」


そして、最後に余計なひと言を加えてきた。

「あ、私も今の高梨くんでいいかどうか、しっかり見極めないとだし。」


俺たちは声に出して笑った。

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