29話 合間の休息⑥

「そういえば、自己紹介がまだであったな。

 私は『銀剣』ハルドレーン・ロンドラーレ。略してハルドと呼んでくれても構わない。

 位は金板、今後ともよろしくだ。」

「きんっ…」

 驚きの声を飲み込み、深呼吸で心を静める。

「僕はセイル、通り名は…まだ決めてないです。

 それでこっちは『青袖』のラディ。」

「どうもです。」

「む、まだ通り名を決めあぐねているのか。」

 うまい事流してくれないかなとも思ったが、さすがに無理な話だった。

「アスレィ伝記に憧れての冒険者なので、特徴的なのにしようと思ったら、中々決まらなくて……。」

「なるほど、憧れか。いい動機ではないか。

 近頃はさほど不自由しないかもしれないが、冒険者としての大成を志すなら、必要な時も来よう。大いに悩んで決めるといい。」



「ところで、だ。先ほどは濁されたようだが、わざわざそちらからのコンタクトだ。

 何か悩みや迷いでもあるのではないか?」

 最初はラディの事は相談できないなと思っていたが、ちょっと心が揺れる。

 金板級ほどの人なら…いや、やはり慎重を貫こう。

「えーと…今は大丈夫、かな。

 ただ今後困る事があった時に、助けてくれる人がいたらいいなって。」

「なるほど、コネクション作りか。」

「まぁ、平たく言えば。浅はかですかね。」

「いいではないか。きっかけなど、些細なものでも。

 それに本来、こちらから情報支援をもちかけるべきだったのだ。手間をかけさせてすまない。」

 上も上で色々あるんだなと流し皿から取った肉をひとかじり。

「今後で困る事があったら、遠慮なく相談しに来てくれ。よいな?」

「心得ておきます。」



「ところで、そっちの嬢さんは食べなくてよいのか?」

「いえ、いいのです。しょーしょく、というやつなので。」

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