25話 合間の休息②-アスレィの伝記
『英雄』アスレィ。出身は不明。およそ700年前の人物。
国同士が牽制しあい魔物は暴れ狂う、波乱の時代だ。
…と、ここまではこれまで読んだ巻や聞いた話で知ってた。
そもそも700年前という時代の子細、1巻はそこから始まっていた。
当時はまだ国同士の繋がりが薄く、それぞれが軍事力を整え、警戒し合っていた。
加えて竜とは敵対関係、縄張りにうっかり足を踏み入れ犠牲になる者や、狩りや気まぐれで村が焼失する事もあるような不穏な時代。
わずかにあった物流という名の交流も、軍の主力格を護衛として行われ、実情としては偵察みたいなものだったとか。
そして国対国に注力し、魔物対策は国の中枢を守れる程度の最低限。結果、一般国民が割を食う形に。
民間で魔物討伐の組織…のちのギルドの原型が組まれていったものの、うまく機能するとも限らず。戦力不足で犠牲者が多数になるところもあれば、内部分裂して組織として崩壊したところも少なくなかったとか。
そんな国を渡る事は普通に考えたら不可能な時代だ。
けど、アスレィは世界を渡り歩いた。
記録上、最も古い活動は西の果ての村とされている。
村の自警団の危機に割り込み、大猪を討伐したのが彼の最初の武勇。
大剣と爆炎魔法という攻めの強い戦闘スタイルは当時
最初は
尽力する彼の姿勢は偽りはなく、
最終的には旅路を進める彼を皆が惜しんだそうだ。
噂というものはすさまじいもので、取引商を伝ってだろう、次の村に着いた時にはもうその名が届いていた。
当時の無許可な訪問は当然重い罪となるが、武力に困窮した民に拒む者はおらず、止めようにも敵う者もおらず。
匿われながらも魔物を狩り続け、頼りにされ。隠匿の為に戦果を村の戦士のものとしたせいで、記録の検証に難儀したんだとか。
旅の内に彼の実力も上がっていき、討伐する魔物もより大物になり。話のネタにしやすくなれば、噂もより広がり。
流石に国の上層部にも話が届き、無視する事ができなくなり。
不穏分子ではあるが、戦力として引き入れた場合のアドバンテージを優先し、正式に軍に引き入れようと試みる事にした。
しかし彼は捜索の網をかいくぐりながら、尚も記録として残るほどの脅威とされた魔物を狩って回り。ようやく発見した時はただの偶然の遭遇で。
勧誘の交渉をしたが、彼は断り。軍は粘ったが、最後には折れて正式に敵対的存在として抹殺する事に。
しかしどの刃も矢も彼には届かず、「楽しい追いかけっこだった」と言い残して隣国へと旅路を進めるのであった。
…かなり時間をかけて熟読してたようだ。もう外が暗くなりはじめてる。
残りは今後の休日の楽しみにしよう。
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