24話 合間の休息①
あれから数日、ラディは何も掴めずにいた。
連日シマサキジカ狩猟…とはいかなかったが、おおよそ同じ強さの魔物相手に回数を重ねてみた。
エンと自分での連携には慣れてきた。ここだ、と思った所にエンが撃ってくれるし、その予測が付けばその先の追撃までスムーズに繋がる。
パーティ戦術の基礎中の基礎の段階なんだろうけど、それでも進展が見えているのは気が楽だ。
けどラディは、強みを生かし方で行き詰ってしまっている。
相変わらずラディ自身が無敵なのはいいが、良くも悪くも戦況に関与できていない。
敵による不得手は無い。けど得意なパターンも持ち合わせていない。物理的な盾となるには力不足、搦め手を取ろうにも知識不足。
捕縛タイミングの見極めは上がり止めを刺せるまでの時間は早くなったが、それでも伸びに悩んでいるのは否めない。
連日に渡り依頼をこなしてそろそろ休みが欲しい、とのエンの進言で休みを取る事になった。
リフレッシュすれば行き詰まりに解消にもなるだろうし、とそれに承諾。
なによりも少し土地勘が付いてきた今、改めて街の観光もしたい。
という事で2日間のお休みだ。
今日のところはラディと別行動。あいつも今更道に迷う事もないだろう。そもそも元からこの街に住んでるわけだし、一応は。
多少なりとも知見を得た上で、同じ風景でも違って見えたりもあるだろう。きっといい気分転換だ。
そして自分はというと、図書館に来ていた。
村じゃ物の流通に自由なんてほとんど無く、通りがかりで泊まる行商人から買ったり、旅人の処分品をもらったり。最低限の食料流通ルートはあったが、本だとかの趣味の物を取り寄せるには非常に手間で、当時の自分には到底手が届く物ではなく。
雑貨の行商人が来ては伝記本が無いか毎度聞き、旅人には旅先で聞いた面白い伝聞は無いかを聞き。巡り合わせでしか集められず、その中でもアスレィ伝記に限ると集められたのは全36巻の内、4巻のみ。他にも気になる伝記書はあったが、飛び飛びでしか集められずで全容は読み取れず。
そんな環境だったから、図書館に入ってまず思った事。
どこから手を付ければいいんだろう、これは。
まず最初に壁一面の本に圧倒され、目がくらみ。方向感覚を失ったままふらふらと奥まで流れ込み。
気が付けば本棚の迷宮の真っ只中。惹かれるタイトルを振り切りつつ、道を探り探り。
途中でエンを見かけたが、気に留める余裕も無く、気付かれず。
目的の本が2階にある事に気付くまで、大分経ってしまった。
目的の本棚にたどり着いても、今度はまた別の誘惑。
中途半端に知ってる名前の伝記本。
アスレィの事は本以外でも、聞いた話で知ってる事は多い。
けど1冊だけ持ってる本、話で聞いた勇士の名前、そういった詳しくは知らない物語。それらが今は自由に読めると思うと、あれもこれもと本を取りたくなってしまう。
…ちょっとだけ、誘惑に呑まれかけた。
実際、それでもよかったんだろう。自分だけの時間だし。
けど初志貫徹、どうにかアスレィの伝記にたどり着く。
一度ちゃんと読んでみたかった。修羅の時代を渡り歩いた、英雄アスレィの旅路の記録を。
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