23話 三人連携③

「分かってる。だから次からは合わせれると思う。」

「むしろ最初にしては、よく合わせてくれた方よ。」

 納品も終わり、酒場で夕食。これまで品質だけは保ってきただけに、表面が焦げたのを渡すのにちょっと惜しさはあった。

 昨日の分の報酬が手元に入り、ちょっと贅沢に一段階高い肉。身が締まっていつつも柔らかく重厚、だけどレモンだれも相まってガツガツいける。

 …ただ、報酬金の半分近くが食肉としての納品額だった。今日の分はそれが無いと思うと……。

「どうしても反応が遅れちゃうところは、慣れていけばいい。お互いにね。

 ただラディ君の方は…1ついいかな。」

「なんでしょうか。」

「ラディ君は、拘束する以外でできる事、何かない?」

 少し思考の間ののち、ラディが返す。

「…と、いいますと?」

「例えば攻撃できるような魔術とか、武器を扱ったりとか、なんでもいい。

 まだ他の手を使ってないだけならいいんだけど、無いんだったら、何かもう1つくらい戦い方が欲しいところね。」

「いえ、かんがえた事もなかったです。けど、つかまえるだけでは足りないです?」

「弱った魔物をラディ君が捕まえてしまえば、あとは止めを刺すだけ。それが大きな強みなのは確かね。

 けど、弱らせるまでに何ができる?」

 確かに、一度崩したりした魔物の拘束にはめっぽう強い。けど突進する魔物を止めたりといった力には乏しい。最初はツノネズミですら捕り逃しが出るくらいだったほどに。

「なるほど…自分でもよわらせられるように、と。」

「それも選択肢ね。他にも例えば、完全拘束以外にも動きを封じたり、何らかの攪乱とか。

 今すぐって訳じゃないけど、活動の中で探りたいところね。」

「こんごのかだい、というやつですか……。」



「じゃ、明日もよろしくね。」

 エンが席を立ち、今日の所は解散。

「…エンさんとパーティを組んでから、なんだかだあわただしいです。」

 エンに聞こえないくらいのところで、ラディがつぶやく。

「けど、助かってもいるんだよね。パーティとしての立ち回りとかは素人だし。

 さっきの話だって、僕の方からどうラディに繋げるかに考えが行っちゃってたから、なんていうのかな、アドバイスするのに慣れてないのかな。」

「なるほど……。」

 とは言うが、半分くらい納得いかなそうな表情。

「でもエンさん、なにかに追われてるような、あせってるような…なんか気になるのです。」

「…考えすぎじゃないかな。見立てがあるなら、言わないのはただの時間の無駄だし。

 経験の差って、思ったよりでかいよ。」

「…やっぱり、エンさんがまだよく分からないです。」

 とは言ったが、釈然としない所が無い訳ではない。

 あの手際の良さ、探知の得意な光魔法の使い手。フィールドワークにしても荒仕事より調査の方が向いてるだろうし、冒険者を謳歌してる訳でもない。

 …………。

 考えて分かる事でもない。もしもそれが軋轢になるような事になったら、その時に聞けばいい。

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