20話 幕間:冒険者の階級

「『きんばん』って、どれくらいすごいのでしょうか?」

 宿に戻り、装備の手入れの最中、ラディからの疑問。

「ん、冒険者のランクの事かな。」

「多分そうかと。おひるの酒場で聞いたことばなので。」

「そうだな、じゃあ改めて一から纏めて説明した方がいいかな。」


「まず、一番下の『木板級』、昨日までの僕らの階級だね。

 前も言ったけどお試し期間、実力と信用を確かめる間のランク。だから原価が安く量産しやすい木製の証が渡されるわけだ。」

 防具を脇によけ、自分のプレートを取り出して見せる。

「その1つ上が、今の階級の『銅板級』だ。一般的に冒険者と言うと、指すのは大体銅板級以上だろうな。

 『パーティを組んで中型魔物を討伐できる』のが強さとしての基準ラインで、それに満たないとされれば剥奪もあるそうだ。」

「はくだつ…冒険者ではなくなる、と?」

「まぁそうだな。一度実力不足とされたら、もう一度審査を通るのは厳しいだろうな。

 僕らには無縁な話だろうけども。」


「そのさらに上が、『きんばんきゅう』です?」

「いや、間に『銀板級』が入る。銅の1つ上で金の1つ下。

 『パーティを組んで大型魔物を討伐できる』、戦力としてのエース級だな。」

「大型って、どれくらい強いのです?」

「ここに来る前に、大熊の魔物と戦ったろ? あれが多分大型に属する。

 あの時は運よくいったけど…まともにやりあったら、勝てる気がしないな。炎でびびってはいたけど、ダメージが通ってたようには見えなかったし。」

 なによりあの3メートルほどの巨体相手に、剣で応戦すら厳しいだろう。あの時ももしかしたらがあったと考えると、背筋がぞっとする。


「それより上ということは、もっとすごい人たちがいるのです?」

「あぁ。けど『金板級』は強さはもちろんの事、加えて『絶対的な信用』が必要になる。

 要は何か重大な依頼を頼む時、大がかりな作戦をとる時、それを率いる事ができるリーダー的存在だ。

 それだけの知名度が無いと務まらないし、僕らも何かの拍子に活躍を聞くかもね。」

「それは、れきしに名前がのこるほど、ですか?」

「歴史的に有名となると、その上で何か功績を挙げないと、かな。

 けど、名をあげるにはまず金板級にならないと、ではあるね。」

「じゃあ、セイルさんのもくひょうの1つでもある、と?」

「そうだな、そうなるな。手始めに…なんて気軽なものではないけど、金板級、その為にもまずは銀板級にならなきゃだな。」

 とはいえ今は、銅板級とはいえ念願の冒険者である事に、まだわくわくしてる。もうしばらくは、この高揚感に浸っていたい。

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