19話 パーティ結成⑤
「…つまり、ラディ君自身も自分の正体が分かってない、と?」
シマサキジカの納品を終え、酒場の端の席。テーブルの上にはシマサキジカのステーキ盛り。
銀版級以上は納品物の精査もあり報酬は翌日以降だが、食肉を納品した場合はその場で一品いただける、というルールとの事。
解体時間の関係で納品した肉そのものではないが、そこにこだわる狩人との折衷案からこうなったそうだ。
厚切りの肉は大雑把に見えて、噛み応え抜群の火の通りに肉の味を殺さない塩加減、まさにこういう場に求めていた雑なボリューム感。
…などという事は、今は些細である。
「はいです。…すみません。」
「そこまではまだいいの。問題は事をややこしくした、あんたの方。
もしそれで厄介事になったら私は知らないで通す。いいね?」
「分かってるってば。」
曖昧なまま、事を進めた自分の責任だ。気持ちが高揚してたとはいえ、何故それで通してしまったんだろうな、と今は思う。
「それはそうと、手際見させてもらった。
相手が弱い魔物とはいえ、連携は中々ね。ただ、気になる点はいくつかあった。」
ほどほどに満腹になったあたりで、改まっての話題。
「まず、近接に寄りすぎね。ラディ、あなた名目上は術士でも、立ち位置としては前衛じゃない。」
そう言い、エンがラディに目配せ。
「その、すみません。」
「…適性というものはあるし、事をややこしくしたのはセイルのせいよ。
それに分かってさえいれば、やりようはいくらでもある。」
エンが皿を脇によけ、改まる。
「だから確認しておきたいの。
ラディ、敵を捕まえてる時、攻撃に巻き込んでも平気?」
「こまかくは試してないけど、斬ったりは平気だとおもいます。」
「…ごめん、聞き方が悪かった。
具体的には、電撃とか平気だったりする?」
電撃…確か通り名では雷雨と名乗ってたっけ。さっき撃ってた光線は見る限り光属性、まだ本領は見せてないという事か。
「どうでしょう、試さないと分からないです。」
「じゃあ、明日早めに来れる? 一応長めに見て11時、集合場所は修練所前。
場所も大丈夫よね?」
「分かった。それで合わせよう。」
返答を確認し、エンが席を立つ。
「そうだ、ついでに。
その手甲、世代が古いから、報酬入ったら買い替えた方がいいよ。」
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