17話 パーティ結成③-魔力濃度
剣よし、鎧よし、手荷物よし。
緊張し何度も確認した。欠けは無いはず。
大時計の針は11時半過ぎを指している。予定よりは一歩早いが、遅れるよりはましだろう。
昼飯はとっくに済ませ、コンディションは万全。飲み物のカップはほぼ空に達し、流石に気が早まりすぎたかなと思い始める頃。
ラディの前にも空のカップ。最初は興味と雰囲気でラディが頼んだものだが、やはり味覚は無いらしい。けど手元に何も無いのも寂しいしと、ここ数日何かしらを注文してる。
「おまたせ。…早すぎじゃない?」
それから合流まで、そこまで長くはなかった。12時までまだ15分以上ある。
「遅れるよりはマシだしね。てかお互い様だし。」
「ま、今日は打ち合わせもしたいから助かるけど、無理はしない程度にね。」
全員が席に揃い、本題へ。
「そもそもなんだけど、あなた達、近辺情報とか大丈夫? 把握してる?」
昨日で大体の立場は決まっちゃったな、と諦観モード。
「いや、この街には来たばかりで、全く……。」
「…じゃあ一から説明してあげる。
簡潔に言うと、ヤバいのが近場に来てるって話なのよ。それで滞在してるっていう、街の北側を中心に魔力濃度が濃くなってる。
もう北半分は金板以外立ち入り禁止なくらいだから、それを踏まえた上で依頼を選ぶように。」
「最大濃度は?」
「発生源はまだ特定できてないけど、濃度300までは観測したとは聞いてる。最大で350前後と言われてるわね。」
俯瞰イメージを立ててるところに、ラディからの疑問の声が。
「『のーど』というのは、どういうものなのです?」
「『魔力濃度』というのは名前の通り、その地域やエリアの魔力の濃度ね。」
答えようとしたが、エンに言葉の先手を取られる。
「魔力は酸素と同じように、常に空気中に一定量あるものなの。それに慣れてるから、感じ取れないだけで。
で、何らかの原因で魔力が濃くなった場合、平常時を『濃度100』とし、分かりやすい指標として数値化するの。」
「『のうど』が上がると、なにかいけないのです?」
「まず、慣れてないと体調に不具合が出るわね。目安だけど、一般市民が濃度120の場所にいると意識が朦朧とし、150にもなれば失神するんだとか。」
「それは…たいへんですね。」
ラディにも当てはまるかは疑問ではあるが、そういう認識を持っててくれるのは助かるところ。
「そして問題になる点。その濃い魔力に慣れて、住み着く魔物。
高い魔力に適応した魔物は、どうなると思う?」
「…あつかえる魔力も、たかく?」
「そう。濃度に比例してより多くの魔力を扱えるようになって、適応の副産物として体格が大きくなったり、筋力が増したりもする。
要は『濃度120の場所は魔物も2割増で強い』ってわけ。」
一息の間を置き、エンが言葉を続ける。
「と、いうわけだから、依頼選びは慎重にね。
濃度表記があっても、観測した時より濃くなってたりとかも、報告があるみたいだし。」
「不安なくらいなら、自分で選んだら? その方が確実だし。」
それに対する答えは、かなり小さい声で返ってきた。
「…大変なのよ、背が低いと探すのが。」
「あー……なるほど。」
猫人の身長は、自分の腰くらいしかない。それを考慮してない高さの掲示板はまともに読むのも困難だろう。
「まぁ、とりあえず今日は実力も見たいし、一番簡単そうなのでお願い。決まったら、私のチェックを一度通してね。」
「…了解。」
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