16話 パーティ結成②

「パーティ編成希望、『雷雨』のエンよ。よろしく。」

 落ち着きに満ちたその声。猫人の声はどうにも高く、性別が分かりづらい。

 とりあえず、一度深呼吸して気を落ち着ける。

「僕はセイル、通り名はまだ無い。

 それでこっちが──」

「『青袖』のラディです。よろしくです。」

 一連の間に、テーブルの向かい側にエンが座る。…その青い目に値踏みをするように見られてるのは、おそらく気のせいではないだろう。

 そして抱えてきた書類を広げ、エンから話を切り出す。

「…とりあえず、いくらか預かってきたから、事務的な手続きを終わらせてしまいましょ。

 これが契約書であり誓約書よ。内容の説明は要るかしら?」

「いや、大丈夫。自分で確認するよ。」

 言葉のあやで行き違いが起こっても面倒だし、と書を受け取る。

 …大まかな内容は予想通りだったが、念のため細部まで目を通す。

「なにが書いてあるのです?」

「えーと、大まかに分けると3つだ。

 1つ、基本的にギルドからの指示には従う事。当然っちゃ当然だわな。」

「それって『れーぞく』ということです?」

 どこでそんな言葉を覚えたのか気になったが、こらえて言葉を返す。

「ただし指示側に問題がある場合はその限りではない、だな。極端な話、捨て駒にされるような指示とか、そういう場合は従う必要は無い。休暇とした日の呼び出しなんかも従う必要は無いから、印象ほどの強制力ではないね。

 2つ、各種依頼の遂行で損害…例えば大怪我した場合、その責任は負わない。依頼の選択とかから自己責任、って事だな。」

「つまり、むりな依頼をうけた方がわるい、と?」

「それもあるだろうけど、ちょっとの損害でも騒ぎ立てる人はいるだろうから、トラブル回避の為だろうな。その分収入はいいから、それでどうにかしろって事。

 3つ、この編成依頼で組んだ場合、その中での喧嘩は厳禁だ。…別にそれ以外の喧嘩がいいわけじゃないけど、より重罪になるね。」

「なるほど、了解です。」

 まぁ、ラディなら大丈夫だろう、と代表として署名。隣には既にエンの署名、これで正式にパーティ結成だ。


「じゃあ、私の方でコレ出しておくから、明日12時集合ね。

 …ついでに色々預かってきたけど、私には必要無いから置いておくね。好きに使って。」

「あ、ありがとう。」

 そのまま手際よくエンが退席。ともあれ明日から本番、特に念入りに準備せねば。

 …ところで、いくらかの紙束が残されていったが、これは何だろうか。

「この辺りの地図…はまだいいとして、近場の鍛冶屋の案内に、魔法道具の手引き書き…?」

 ありがたくはある…んだけど、いきなり下に見られてる感じが、なんかスッキリしない。



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