7話 繁華の街レミレニア②

 見たこともない料理の屋台の数々。そして香ばしさや甘いかおりに、時折香草の変わったにおいも入り乱れ。

 そんな誘惑に挟まれた街道を、探索したい欲求を抑えつつ、ラディの後を追って通り過ぎていく。



 軽い気持ちで荷物持ちをすると言ったはいいが、道中での寄り道で薬草の採取量は増えに増え。ラディ自身も一袋抱えてるあたり、俺が持ってる分は普段より多く採った分だろう。

 ここまでの疲労が、到着の安堵で増幅される。早いところ荷を届け、街を散策したい。

「目的地って、まだ遠いのか?」

「いえ、もうすぐです。そこを曲がったあと、3つめの──」

 その先の言葉は聞き流した。ラディのものの測り方の基準が、どうにも俺とは大分違うらしい。この場合、かみ砕いて把握するなら「まだ距離がある」、だろう。


 もういっそ街の向こう側まで通り抜けてやる、それくらいの意気込みで袋の紐を握る腕に一層力が入る。

 徐々に観光的な店は少なくなり、道具屋や薬屋、そして武具屋までちらほらと。食の誘惑が減っているのが、今はありがたい。

 5・6回ほど曲がった頃には、同じ街とは思えないほど静かな場所にたどり着いた。


 その店は静かに、「薬屋」という最低限の情報だけある看板を掲げて、そこにいた。

「ここでいいのか?」

「はいです。ありがとうございます。」

 そう言い、ラディが荷物を引き受ける。が、全部抱えきるには身長が足りず、ほとんどを引きずっていく。

 ラディが戸の向こうに消えるのを見届け役目は終わり、その場を後にする。


 しかし数時間前まで一人旅だったはずなのに、いざこうして再び単独行動となると、ちょっと物寂しさ。

 伸びをして気持ちを切り替えようとするが、繁華街から離れたここでは、大した効力にはなってくれない。

 そして、漠然とラディの案内任せについていってたせいで、戻る道順が分からない。仕方なしと、てきとうに探索し始める。

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